読書メモ
・「外国人投資家」
(菊地 正俊:著、洋泉社 \780) : 2008.05.18
内容と感想:
著者はメリルリンチ日本証券の株式ストラテジスト。
外国人投資家の日本市場における存在感・影響力の大きさはよく知られている。
日本市場における売買シェアは外国人が5割。個人投資家が3〜4割。
また外国人の日本株の保有比率は1/4である。
個人の一般投資家や国内の投資家は彼らの視点を知り、彼らの行動を予想することで投資戦略のヒントになるだろう。
彼らに将来好まれるであろう銘柄を先回りして買えればいいのだ。
外国人買いと思われても、実際には外国資産運用会社の資金を日本人が調査・運用するケースも多いらしい。
日本の金融機関が外国の運用会社に委託して、それが外国人投資家と勘定されることもある。
その外国人投資家の視点だが、彼らはROEや資本コストを重視し、
営業利益率の高い企業の保有率が高い。
また財務体質が良い低PBR銘柄に注目し、テクノロジーに強い企業、グローバル競争に勝ち抜く企業を好む。
日本株の運用は大型株が中心である。
外国人に投資をしてもらう企業経営者としては彼らとうまく付き合うことが重要になっている。
○ポイント
・経営者には外国人投資家とのコミュニケーションが重要に。彼らの支持が不可欠。アナリストとも対等の姿勢で臨む必要あり。
・日本は国際的に製造業に比較優位がある。金融業は比較劣位
・金融業界では国際的な再編が進展。金融テクノロジーや人材マネジメントで強みを持つ欧米の主要金融機関が世界の資本市場を席巻
・日本の機関投資家は運用が短期志向
・竹中元金融担当大臣は不良債権問題を解決したことで評価が高い
・韓国のサムスンが急速にブランド力や市場シェアを高めている
・日本電産は永守重信社長の経営手腕や企業成長力が評価されている
・日本株投資で1企業の株式の10%以上を取得する場合、証券投資でなく直接投資に分類される。日本への直接投資は極めて少ない。
外国人による日本への投資は短期で流動的な証券投資が中心
・カストディアン:株主名簿に登場することが多い。信託銀行などの代理的な株主
・大手外国資産運用会社は日本に大規模な調査部隊を抱える。質量は大手証券会社に勝るとも劣らない。分析力に優れ企業経営者から直接聞く一次情報を重視
・日本国債の外国人保有率は5%
・日本のバブル経済のピーク時、日本の株式時価総額や土地時価総額はアメリカのそれを上回った。市場全体のPERは100倍に近づいた。
・リスクは高いがバブルの最後が最も投資妙味がある
・ジャスダックは7〜8割が個人投資家、外国人は1割
・大バカの理論
・残高200兆円の郵貯の行方を外国人は注視している
・株式にはインフレヘッジ機能がある
・2007〜2009年の間に約700万人が定年退職し、約50兆円の退職金が支払われる
・日本株は発展途上国よりも流動性が高く、政治リスクも低い
・Big picture:外国人投資家の好きな言葉。大きな流れを捉えよう
・外国人投資家には技術力が国力を決めるという考えが根強い。テクノロジー重視。進取の精神を大事にする
・資源開発会社として総合商社が再評価されてきた
・素材産業には業界再編期待がある
・BRICsのGDP合計は日本の4倍。人口は世界の半分弱。ロシアが最大の資源輸出国。中国は資源や食料の大きな輸入国
・株と商品には負の相関がある。2000年以降は商品が有利な時代
・米国型のコーポレート・ガバナンスも万能でない
・株式非公開のメリット:不特定多数の株主や短期的な株価や業績を気にせず、中長期的な観点から経営に専念できる。買収リスクが少ない。IRコストがかからない。
・三角合併:多額の現金を用意することなく株式交換で日本企業を買収できる
・高配当は個人投資家を増やし、買収防衛策としても機能する
・四半期配当は事務コスト負担増になる
-目次-
はじめに 外国人投資家を知らずして日本経済は語れない
第1章 そもそも外国人投資家とは誰なのか
第2章 日本市場において外国人投資家の存在感はなぜ高まっているのか
第3章 外国人投資家が買わないと上がらない日本株の仕組み
第4章 外国人投資家に買われる株・売られる株
第5章 外国人投資家は日本の政治・経済をいかに読み解いているか
第6章 外国人投資家は日本企業に何を要求するのか
付章 大手外国人投資家の紹介
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