読書メモ

・「GIの勝ち方 ―サラブレッド金言108
(藤沢 和雄:著、小学館 \800) : 2008.08.30

内容と感想:
 
著者はご存知のとおり、多くのGIホースを送り出し、リーディング・トレーナーとして確固たる地位を確立した名調教師であり、 私も馬券選びでは最も信頼できる調教師の一人である。
 本書は週刊ポストに連載の「藤澤和雄のサラブレッド金言」の記事をベースにした本である。 各章が日本の中央競馬(JRA)のGIレースがテーマになっている。 「はじめに」で著者が言うように、「強い馬とはどんな馬か」、GIを勝てる馬とは?そこまでにはどんなプロセスを経ているのか? など、著者の調教師経験を基に「GIホースの条件」を綴っている。 レースごとに特徴があり、勝つための条件も違っている。その辺りも詳しく書かれており、 本書は馬券予想の参考にもなるだろう。
 藤沢和雄というと外国馬、短距離馬のイメージが強い。 フランスGIを含めマイルのGIを4つも勝ったタイキシャトルも彼の厩舎の馬だった。本当に強かった。安心してレースを見ることができた。 GIの常連のような調教師だが、まだダービーは勝っていないし、そこが競馬の難しいところ。
 巻末には付録として藤沢厩舎の重賞勝ち馬34頭のリストが掲載されている。 2008年春現在で、これまで11頭のGI馬を生み出してきたことが分かる。その内、4頭はサンデーサイレンス(SS)産駒だった。 また重賞勝ち馬34頭中、11頭がSS産駒であることからもSSが如何に偉大な種牡馬だったかが分かるし、 結局、藤沢厩舎も一時期は「SSさまさま」だったということになる。

○印象的な言葉
・馬体重が減っても能力には関係ない。多少の増減では影響しない
・皐月賞は王道を歩んできた馬が強い。早くからクラシックを見据えて使われている
・何の心配もなくビシバシ調教できるような馬でないとクラシックは乗り切れない
・天皇賞・春は調教技術、騎乗技術が問われる。ごまかしがきかない。コツコツ勝ち上がってきた馬には難しい
・NHKマイルカップがダービー前のステップに使われるようになった
・東京競馬場は本当の実力が問われるフェアなコース
・砂をかぶったり、挟まれたりして走るのをやめてしまうのはほとんどが牡馬。タイムオーバーも多い
・ダービーは波乱が少ない。実力差がはっきり出る。人気馬には力のある騎手が乗る。人気馬は軽視できない
・世界的にスピード競馬になっている。スピードのある馬を2,400mのレースに使ってくる。かつてのダービー馬の産駒では成功しない
・安田記念の時期は欧州は競馬シーズン真っ盛り。この時期に来日する馬が減っている。香港はオフシーズンを迎えるため日本に来ることが多い
・スプリンターやマイラーは香港馬が強い。オーストラリア、ニュージーランドから短距離が強い馬が入ってきている
・香港では馬主が所有できる馬の数が少なく、強い馬ばかりになる。賞金も高くなっている
・宝塚記念の時期はメーンレースを終えた馬たちは休ませたい。早めに休養し、秋は早めに始動するほうが調整しやすい
・海外遠征を予定している馬には宝塚記念はよい
・競走馬の頭数が増え、レースを除外されることが増え、目指すレースになかなか出られない。いつでも出られるようコンディションを整えるのにはトレセンにいるほうがよい
・地方での滞在競馬では思うような調教がしにくい
・調教施設の充実や調教技術の向上で故障する馬が少なくなった
・牝馬は夏の暑さにも我慢が利く
・「夏の上がり馬」はなかなかいない
・スタミナは調教ではつかない。距離適性は血統的な裏づけ、天性のもの。
・折り合いがつきやすい素質を引き出すのが調教。騎手の指示が出るまで我慢できるように。
・秋に重賞4戦の出走は過酷。年末の有馬記念に余力を残せるローテーションが理想。GIを勝っているような馬は天皇賞・秋からぶっつけでも十分
・牝馬が牡馬の古馬と戦うことは辛いこと。特にGIを勝つような馬は力を出し切って消耗してしまい、駄目になる
・ジャパンカップの時期は欧米ではシーズンオフ
・バブルの頃にいい種牡馬、繁殖牝馬が入ってきてレベルが上がった
・武豊はエンターテイナー、プロ。強い馬をより強く見せて勝たせる
・アメリカはダート競馬が主流。馬場は泥のよう。日本より時計が早い。コースは小回りで直線が短い。左回り
・世界最高賞金額のドバイワールドカップ(4億円)
・強い馬は芝でもダートでも強い
・短いレースのほうが紛れが少なく、馬の能力を測る目安になる

-目次-
桜花賞
皐月賞
天皇賞・春
NHKマイルカップ
ヴィクトリアマイル
オークス(優駿牝馬)
ダービー(東京優駿)
安田記念
宝塚記念〔ほか〕