読書メモ

・「「株のカリスマ」プロフェッサー・サカキの お金をふやす頭脳トレーニング
(榊原 正幸:著、講談社 \1,300) : 2008.07.13

内容と感想:
 
これまでの「株式投資「必勝ゼミ」」シリーズとはちょっと感じが違う。トーンが違う。 しかし本書もファイナンシャル・リテラシーを身につけるための啓蒙の書になっている。 前作までの講義の内容も含まれているが、それはオサライ程度(第3章)。 どちらかというと何のためにファイナンシャル・リテラシーを身につける必要があるのか、という考え方をメインに説いている。
 第3章では今は「好き嫌いを問わず、すべての人が株式投資の知識と技術を学ばなければならない時代」と言う。 「自分で必要性を感じていれば、ちゃんと学べる」。毎日の仕事のように。 投資は「心豊かに生きるための手段の一つ」であると捉え、本書も「楽しく学ぶ」を基本方針に書かれている。
 第1章では「時間とお金」について考えていて、「時間主義経済」という考え方が出てくる。 第2章では新車のマークXを買うのが得か、中古のBMWを買うのが得か、あるいは分譲住宅か賃貸か、中古かなど減価償却を中心に投資を考える。
 なぜか第4章は投資とは全く関係なく、心豊かに生きるための考え方について説く。ここでは「資本主義から心本主義へ」なんというフレーズも出てきて、 この人どうしちゃったのかしら?とも思ったが、本書が出た2007年に入ってから景気も下り坂になった分、これまでのように景気のいい話が出来なくなって、 株投資を煽るのを控えたのかも知れない。しかし、サブプライムで下がるところまで下がった今こそ、仕込み時という考え方もある。

○印象的な言葉
・イナフ・マネー(必要にして十分な額のお金)
・時間主義経済
・パレート最適:ちょっとした思いやり。誰も損する人はいなくて、得する人がどんどん増える。住みやすい社会。社会全体としてハッピー
・取得コスト負担の大きい分譲マンション
・新築マンションへの投資の利回りはあまり高くない
・不動産にはインフレ対抗力がある。「中古不動産を固定金利で取得する」不動産投資なら検討に値する。 減価償却費の負担額が極めて少なく済む
・経済は緩やかなインフレになるのが通例(自然インフレ)
・建物の評価:築年数で10年もたてばタダ同然
・日本の「居住用資産の中古市場」は未成熟。欧米では中古が一般化している。新築より固定資産税も若干低い
・不況期に価格が下がったときがチャンス
・BPS:1株の定価。株価は理論上、BPSになるはず。¥1,500以上なら十分に財務的に安全な企業
・PBR:BPSに比べて実際の株価がどのくらいの水準にあるかを示す。1.0ならBPSと同じ。
・一会計年度に計上する赤字額は1株当たりでマイナス200円くらい。BPSが¥1,500以上あれば一気に倒産することはない
・MUST型の生き方:業務達成型。義務感。日本人的な倫理観
・WANT型の生き方:夢追い型。
・納得の人生。頑張ったプロセスから幸せを感じる
・「学問のすすめ」:賢い人とそうでない人、富める人とそうでない人の差は「学問を積んでいるかどうかの違い」(知の格差)。実用的で生活に役立つ知識。
・心の時代:品位・品格、心の安らぎ
・資本主義から心本主義へ。資本主義の限界。「心の豊かさ」や「満足度」が中心的な価値。「物やお金」は心を満たすための手段にすぎない。

-目次-
第1章 イナフ・マネーという考え方
第2章 知って得する「オモシロ会計学」
第3章 「株式投資」は「時間をお金に換える技術」だ
第4章 「夢」のある人生を生きるためのシンプルな発想法