読書メモ

・「なぜ、エグゼクティブはゴルフをするのか?
(パコ・ムーロ:著、坂東智子:訳、ゴマブックス \1,200) : 2008.04.20

内容と感想:
 
話題になっていた本。最近の若手・石川遼人気などもあってゴルフ人気は息が長いように思える。 タイトルにあるエグゼクティブと言われる人もゴルフ好きが多いようだ。 エグゼクティブ達がゴルフをすればそこは社交の場となり、情報交換の場となる。 人が人を呼び、会社経営や接待にも有効なのだろう、と勝手に想像してきた。 きっと本書もそんな内容なのかと想像して期待せずに読んだのだが、良い意味で期待外れだった。
 経営やビジネスに関わる13つのお話を集めた本である。 カメやアリなどが登場する寓話、クルマの運転やクローン人間、貿易船、気球などを小道具に使った例え話を 用いて、経営管理について分かりやすく書かれている。気の向いたときに好きなところから読めばいいだろう。 なんらかの組織を率いる人を対象に書かれており、リーダーを務める人、目指す人にはお勧めである。
 さて、タイトルの解答は「ゴルフがエグゼクティブの仕事に似たところがある」から、である。 例え話だからゴルフでなくても他のスポーツでも良い。ゴルフのほうがお洒落でイメージがよいから例えに選んだのだろう。 しかしエグゼクティブ達がゴルフから経営を学ぼうとしているとは思えない。学びのためにゴルフをしているわけではないだろう。 たまたまゴルフに経営との共通点を見出した、というだけだ。こういうと身も蓋もないが・・。
 「何かを変えたいなら、まず自分から」というのはエグゼクティブに欠かせない考え方だろう。 自分を変えられないものが他人を変えられようか?

○印象的な言葉
・イノベーションの要因:変化が生まれるペースが速いこと。人(経営者、株主、社員)
・人材育成や宣伝が質のよいものなら、コストにはならない。コストを上回る見返りがある。
・不況の時期に正しい行動がとれる人間はごくわずか。みな疑心暗鬼となり、プレッシャーに襲われ、ナーバスになる。 逆風の中でも正しく行動し、後退する代わりに前進を続ける。
・今日、頂上に登るために役立ったことが、明日には真っ逆さまに転落する原因になることもある
・定年退職者:退職後は就業時間を減らし、新人教育や補佐に当たらせる。後輩は心強い後ろ盾を得て、偉大な先輩から知識と経験を伝授してもらえる。
・否定的、批判的な見方ばかりしていると本質を見誤る
・はっきりした考えを持つことと、考えを変えないことは同じではない
・失敗のもとは「結果に対する不安」
・性能を高めることに熱中するあまり、顧客を第一に考えるのを忘れる
・将来に備えて順調な時期を有効に活かし、時間と資金のあるうちに次の段階に進んでおけるようにする
・症状と病気を混同しない。症状が表に出ることで病気の根があることを警告している。この根っ子を治療すべき。
・リーダーには立ち止まって自分の行動を立て直す機会を
・自分が変わることから始めず、・・・・、奇跡のような方法に頼ろうとしている人がたくさんいる
・従来のセールスマンの仕事は「しゃべるパンフレット」、「御用聞き」。 新しいセールスマンの役割は顧客が必要としているものや抱えている問題を、双方にとってのビジネスチャンスに変え、信頼を得ること。 解決法を考え出し、R&Dの役割も果たし、新たな選択肢を用意。価値を売り、価値を守る。価値を体現する存在、プロダクトの一部となる。 問題の本質、顧客の不安の正体を見抜く。アイデアを儲け話に変える。勇気を持って問題に向き合い、失敗したときは顧客を守る。
・「付加価値のあるセールスマン」は魔法の道具は使わない。これまでと同じものを使うが、使い方を変える。
・困難な時期に生き残る方法はただ1つ。適切な戦略を立て、賢く仕事をする。
・エグゼクティブの責務:決定を下すこと(決定の責任を負う)、統制をはかること
・現代の会社経営は参加型だが民主的ではない。参加型と民主的とは同じではない。
・部下には上手に管理される「権利」がある
・今、持っているもの、今の状態を楽しむ力

-目次-
第1話 進化を拒んだ古代魚と陸に上がったカメ
第2話 こだわりの異なる3人の社長の選択
第3話 1本足になったアリ株式会社の末路
第4話 本当に「使えない」のは車かドライバーか
第5話 有能な社員に新人、ベテランも関係ない
第6話 社長のクローンは働き者ばかり!?
第7話 なぜ、エグゼクティブはゴルフをするのか?
第8話 「自ら動く新入社員」と「指示待ちベテラン社員」
第9話 1006人のうち、会社の妨げとなるのは6人
第10話 すぐに専門家任せのエグゼクティブたち
第11話 「前世紀のセールスマン」と「21世紀のセールスマン」
第12話 ボロボロのガレー船と3人の船長の航海術
第13話 エグゼクティブは熱気球に乗って仕事をしなさい