読書メモ

・「図解 Blu-ray・HD DVDがわかる
(一条 真人:著、技術評論社 \1,680) : 2008.09.14

内容と感想:
 
次世代DVDの規格争いも「Blu-ray Disc」の勝利で決着した。 本書はまだ規格競争の真っ最中に書かれた本。 見開き2ページで1項目ずつ解説。1ページは図表で簡潔にまとめられていて分かりやすい。 私も最近は技術の進歩が早くてなかなかついてけなくて、家電製品もどんどんブラックボックス化している印象だが、 知ってるつもりでも細かいところは知らなかった技術がたくさん出てきて勉強になった。
 DVDはLDやCDなどから始まる光ディスクメディアの流れを汲む。 第1章では本題に入る前に光ディスクの歴史に触れている。 Blu-rayやHD-DVDが「次世代DVD」と呼ばれたのも第一世代があったからだが、 そのDVDの基礎となった技術については第2章で解説されている。
 第3章ではどうして次世代DVDのような大容量ディスクが必要とされるようになったのか、 その背景について書かれている。 第4章はいよいよ次世代DVDを支えるテクノロジーを解説する。 第5章はBlu-rayとHD-DVDを比較。それ以前の章の記述と多少ダブっているのが気になる。
 第6章は次世代DVDのその先について、注目する技術について述べている。 その中でも印象的だったのはネットワークビデオ。 DVDとは直接関係ないのだが、ブロードバンドやHDDレコーダーの普及でわざわざDVDのようなメディアに 記録・保存する必要性が薄れてきたのではないか、という指摘。 WMVのビデオ圧縮方式はVC-1(Blu-rayやHD-DVDでも採用)で、これを使えば10Mbps程度のビットレートでも十分に ハイビジョンのコンテンツをネットで配信できるのだ。つまり、物理メディアがなくても(レンタルビデオ屋に行かなくても) ネットに接続できれば自宅にいながらにして(どこででも)オンデマンドで映画などが楽しめるからだ。 デジカメやビデオカメラなど(半永久的な)データ保存のためのニーズは残っていくかも知れないが、長期的には物理的なメディアは 不要になっていくだろう(ネットのインフラ整備が進んで物理メディアと同等あるいはそれ以上のコストメリットが出てくればだが)。

○ポイント
・CDやDVDなど光ディスクメディアの書き込みでは高出力レーザー光線が必要だが、MOではそれほどの高出力は不要
・光メディアにはグルーブと呼ばれる蛇行した溝が刻まれ、レーザーの光源から遠い部分をランドと呼んでいる。 DVD-RAM以外は近い部分のグルーブにデータを記録し、DVD-RAMではそれら両方に記録する。
・UDF:DVDのファイルフォーマット。大きなファイルを取り扱える、Unicode対応のファイル名を使える
・DVD-Video:市販DVDビデオのための規格
・DVD-VR:ビデオ録画のための規格。ビデオカメラやHDDレコーダーなどでリアルタイムに録画するための形式
・DVD-RWはDVD-RAMのようにランダムアクセスできないが、DVD-ROMとの互換性をもち、コストも安い。DVD-RAMには互換性がない
・CRPM対応メディアでなければデジタル放送を録画できない。再生にはCRPM対応プレーヤーが必要。メディアをコピーしても、複合化できない。
・メディアの限界回転数は1万回転。それ以上を越えるとメディアが割れたり、爆発する。Blu-rayでは12倍速が限界
・VBR:動きのある映像と、ない映像とでビットレートを変えてエンコードすることで同じ容量でも画質を向上させることが可能
・AVCHD:ハイビジョンビデオ規格。MPEG-4 AVC/H.264方式で映像圧縮。フルHDもサポート
・地上デジタル放送はMPEG2-TS形式で放送。HDDレコーダーではそれをDR録画するため劣化がない。
・アップコンバーター:解像度を変換して、擬似的に高解像度でディスプレイに表示
・メディアのハードコーティング:傷に強く、静電気を防ぎ、ホコリやチリなどが付着しにくい。指紋汚れにも強い
・HDMI端子:ディスプレイやプレーヤーなどの機器間で互いを認証し合い、暗号化(AACS)したデータを転送するHDCPに対応。DVI規格と互換性あり
・H.264:MPEG4よりも高圧縮。MPEG2の2倍以上の圧縮率
・VC-1:H.264と同程度。処理は軽い。WMVのビデオ圧縮に採用。
・DTCP-IP:ホームネットワーク内でコンテンツを暗号化して転送する規格
・光メディアの記録層の素材は色素素材か金属素材。金属素材は自然光による変化に強い。金属のほうが高性能なメディアをより短い時間で開発できる
・ROM Mark:Blu-rayで搭載された機能。コピーできない識別子をディスクに埋め込む
・青色レーザーは生産効率が悪い
・DCI:映画館のデジタルシネマシステムの規格。MPEG2やH.264などではなくJPEG2000でフレームごとに圧縮。

-目次-
第1章 光ディスクメディアの歴史
第2章 DVDの基礎技術
第3章 大容量ディスク(Blu‐ray、HD DVD)が必要とされる背景
第4章 次世代メディアのテクノロジー
第5章 徹底比較Blu‐ray VS HD DVD
第6章 次世代DVDメディアの先の未来