読書メモ
・「文系のための「Web2.0」入門」
(小川 浩:著、青春新書INTELLIGENCE \750) : 2008.01.06
内容と感想:
タイトルに「文系のため」とあるように、インターネットやウェブの技術的な面に興味のない人にも
ウェブの進化に興味をもってもらい、ウェブが生活やビジネスに不可欠となっていることを理解してもらおうと
啓蒙活動の一環として本書は書かれた。
「Web2.0」をそれ以前との違いを感覚的に次のように表現している。速くなった、楽になった。それ以前を知らないとこの感覚は理解できないだろう。
「Web2.0的なサービス」に挑戦し起業した企業も多いが、それらの起業家はIPOを目指していたり、
または大手企業にさっさと売却しようとしているという。
一見華やかそうなそのビジネスには一種の危うさと、はかなさが共存する。
ややアンダーグラウンドなムードもあると言う。
Web2.0ビジネスには「遊びの要素」が欠かせず、従来のお堅いビジネスではクールではないらしい。
また、「速い開発」が求められ、スピードについていけないと脱落していくと言う。
大部分は他の書籍でも読んだような内容だったが、後半の近未来の予測のような部分は興味をもって読めた。
といっても主役はグーグル。避けては通れないらしい。
第5章ではグーグルの「グーグルベース」というサービスがネット業界に与える脅威を述べている。
検索エンジンと小口課金代行サービスが組み合わせることで
グーグルが新たなEコマースのプラットフォームを提供し、楽天やカカクコム、SNSやオークションサイトも中抜きにすることになると言う。
これまで各サイトが独自に有していたデータベースがグーグルにシフトするのだ。彼らは脅威を感じているだろうか?
第6章で、グーグルが巨大化し過ぎることを懸念しながらも、ウェブから必要な情報を導き出すために既になくてはならない存在になっている、
と書いているのは多くの人が思っていることだろう。
「グーグルアース」の衛星写真が安全保障上の問題を引き起こしていることや、
ありとあらゆるデータがグーグルを経由すること自体の危険性も指摘している。
著者はグーグルがありとあらゆるデータをウェブにアップロードしたら彼らは神になったと言える、と言うが果たして可能だろうか?
グーグルは本気でありとあらゆるデータをデータベース化しようと挑戦しているらしいが、ユーザの問いに対して検索エンジンが出した回答が「神の声」と言えるだろうか?
その声を信じるか信じないかは占いに近いかも知れないが、その信頼性の基準をどこに置けば、人間は信じることができるだろう?
それが現実のものとなったとき、グーグルはバチカンと対立することになるかも知れないと著者はいう。SF小説のようで面白い。
終章では著者の会社フィードパスのサービスを宣伝しているが結局、何が出来るのか私にはよく理解できなかった。
「おわりに」では、あらゆる人間はインターネットに常時接続されている状態になるだろう、と予測している。
これもSFチックな話だが、携帯電話を1人が1台持つような時代になったことから想像しているのだろう。
本人の意図とは反して知らず知らずに、ユーザが使用しているあらゆる機器がネットに接続されているような状況にはなるかも知れない。
便利だからとネットに依存しすぎるとかえって不自由になりそうな気がする。
○印象的な言葉
・アップル社のスティーブ・ジョブズは優れたテクノロジーの裏で、粘り強さや交渉力により、根気強く周囲の人たちを説得して回った
・グーグルはロングテールで小さな小さな収益をかき集めている
・Web2.0を支えるもの:オープンソース、公開されたフレームワークやAPI。リッチコンテンツ。
・マッシュアップにも限界がある。オリジナリティがなければ長くもたない。もたせようとしていない。
・マイクロソフトがこれまで構築してきたパラダイムに依存している企業は存続の危機に立たされている
・グーグルはありとあらゆる情報をデータベース化し、ウェブにアップロードし検索できることを目指している
・グーグルのエンジニアは強制的に業務時間の20%をユニークなサービスを開発するために充てることを義務付けられる
・検索技術:欲しい情報を探したいというニーズ。量と速度と精度が重要。
・フィード(サイトのサマリー)を生成しているサイトはブログを除けばまだ少ない
・ブログ検索、フィード検索はリアルタイム性に優れ、即時性の高い端的なニュースの取り扱いに向く
・ヤフーはメディア企業
・新聞社の従来の有料月額課金モデルをウェブに持ち込むのは容易ではない。金融情報など鮮度が命の情報をリアルタイムに届ける形なら・・。
・ソフトウエアビジネスの終焉:インターネットベースのSaaSというアプローチによるオンデマンドなサービス
・Web2.0時代は広告より広報:広告より低コストだがPRプランの考案や、メディアとの友好的関係の構築にはそれなりの予算が必要。
継続したニュースの提供など手間もかけていく必要がある。
・音声による情報検索:音声や動画で回答
・ロイター通信は配信記事を登用しそうなサイトを検索エンジンを使ってチェックしている
・FBIや警察庁もテロリスト情報など犯罪に関係しそうな情報を検索エンジンを使ってチェックしている
・声や顔の表情などから感情でさえも入力情報として扱えるUIが開発されれば、より細かく質問者の状況に合わせた回答をグーグルは返すかも
・マイクロフォーマット:コンテンツを構造化するためのフォーマット。コンテンツの種類ごとに規定。オープンな規格
-目次-
序章 “Web2.0”とは、要はこういうこと
第1章 この革命で“何が”変わったのか?
第2章 Web1.0からWeb2.0への道
第3章 Web2.0的ビジネス最前線
第4章 一億総ウェブ時代の新マーケティング
第5章 車も家電も、ヒトの行動も2.0化し始めた
第6章 Web2.0の支配者=「グーグル」というリヴァイアサン
終章 Web2.0時代の先にあるもの
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