読書メモ

・「ジム・ロジャーズ 中国の時代
(ジム ロジャーズ:著、林 康史、望月 衛 :訳、日本経済新聞出版社 \1,900) : 2008.12.22

内容と感想:
 
ジョージ・ソロスとクォンタムファンドを共同で立ち上げた人物。ファンドでは十分に稼いだという。 自らをアドベンチャー・キャピタリスト(冒険好きの資本家)と呼ぶ。 1988年には中国をバイクで横断。 その後、1990年にもバイクで、1999年には車で走ったという。 現地で生の情報を収集するというのが彼のスタイルのようだ。 本書はそんな著者の中国ビジネスの調査報告である。
 中国の著しい経済成長ぶりは誰もが認めるところであろう。 その成長を見込んで既に投資している人、しようとしている人も多いだろう。 またビジネスで進出している企業、しようとしている企業も多いことだろう。
 著者は投資家だが、本書では様々な企業が取り上げられているが、それは推奨株リストではないと断っている。 本書を書いている時点では中国株はバブル気味であった。 そのバブルが収まり「物事が底入れしたら動けるようにしておこう」と序章では書いている。 それまでに本書で中国について学び、チャンスをつかむための準備をしておくのだと。 原題に「A Bull in China」とあるように著者は中国に強気(bull)だからこそ、これを書いた。
 1977年にケ小平が共産党に復帰し、改革開放路線に大きく舵を切って以来、資本主義経済の道を歩んできた中国。 段階的に世界経済の中に組み込まれていき、海外からの投資も増え、世界の工場の地位を築いた。 国民の生活も向上し、内需も拡大している。エネルギー、輸送、観光、農業、保健、教育、住宅、 様々な需要が増加し、それぞれの産業が急成長を続けてきた。 本書では各セクターについて著者独自の視点で分析している。
 貧富の格差、分離独立運動、環境問題、労働争議、汚職など様々な問題を抱える中国だが、 「そういう障害こそが大きな可能性を秘めた投資のチャンスをもたらす」と期待は大きい。 サブプライム問題以降、世界経済は急変したが、それが中国経済に与える影響をしっかり見極めていく必要はあるだろうが、 一時的な成長率の鈍化はあっても、中長期的にはまだまだ中国の成長は続きそうだ。

○印象的な言葉
・13億人の驚くべき可能性と企業家精神が解放された
・19世紀は英国の時代、20世紀は米国の時代、21世紀は中国が中心
・中国で必要な資本のうち市場で調達されたのは10%のみ(2007年)
・中国の株式市場は工業部門に偏る。香港市場は通信株の割合が不釣合いに大きい
・PRSグループによる国別の投資リスク分析では中国は米国よりも低リスク国
・中国・台湾経済は互いに依存。どちらも紛争を恐れている
・マクドナルド要因:マックを売っている国同士が戦争をしたことはない
・水資源管理は世界の中心的な課題になる
・中国は膨大な商売や発明の経験を積んでいる。長い実績
・香港が蓄積してきた銀行業や投資の経験。香港は上海から逃れてきた人が作った街
・世界に6,500万人いる華僑(うち福建人は1,100万人)
・東南アジアでは少数の中国人が経済の大部分を握る。
・三峡ダムは世界最大、最強の水力発電所。原子力発電所15基分。
・長さ2,500Kmの京杭大運河、長さ6,300Kmの万里の長城
・中国の自動車業界は設備過剰。2006年に自動車の純輸出国になった
・中国語ではアメリカを「美国」と書く
・農民の蜂起がもとになって倒された皇帝は何人もいる
・中国人はほどんど何でも食べる
・誕生日を長寿麺で祝う
・2007年の私有財産法で土地の所有と取引の権利が認められた。ただし所有とは70年間借りるという意味。
・用心深く貯蓄する文化
・人民元は今後20年間にドルに対して3〜5倍に上昇する。いつか世界の基軸通貨になるかも知れない
・かつての日本の成長期に日本に投資した外国人は円が上昇したことで大儲けできた。

-目次-
序 章 中国の波に乗る
第1章 人民帽から小型株へ ――投資対象
第2章 うまくいきすぎて怖い ――リスク
第3章 ブランドは百花繚乱 ――銘柄
第4章 そんなに真っ暗なわけでもない ――エネルギー
第5章 ならされていく道 ――インフラ
第6章 高く、高く、どこまでも ――観光
第7章 もう投資した? ――アグリ・ビジネス
第8章 大衆をお客に ――医療・教育・住宅
第9章 ピープルズ・リパブリック ――長期的な未来
付 録 中国株投資のための情報ソース