読書メモ

・「金持ち父さんの予言 〜嵐の時代を乗り切るための方舟の造り方
(ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター:著、 白根 美保子:訳、筑摩書房 \1,900) : 2007.06.24

内容と感想:
 
「金持ち父さん」シリーズの本書では”エリサ法”という耳慣れぬ法律の名前が出てくる。 どうやらアメリカの年金制度にかかわる法律で、最近、日本でも導入する企業が増えている401kといった年金プランも この法律で誕生したものだそうだ。 本書では401kといった年金プランが自分達が思っているほど安全でなく、 それが完全無欠なシステムではないこと、人々が引退間際になって全てを失う可能性があること、 に気付いた著者がそのリスクを回避するための提言をしている。
 アメリカはエリサ法によって今の世代が社会保障費(年金、医療費など)のお金の問題を巧妙に子供の世代へ先送りした。 それで生まれたのが401kといった制度だが、それがいずれ世界市場最大の株式の暴落の引き金を引くだろう、と予言する。 本書ではそれに備え、そのために何が出来るかを考えよう、備えるための時間が2010年までは与えられている、と言う。
 新しく生まれた年金制度の問題は、お金に対して知識が乏しい人たちに無理やり株を買わせ、引退時にはその株の売却で 年金として受け取らせるものだ。 これによって多くのアマチュア投資家が株式市場に参入し、その間は株価は上がることになる。 ベビーブーマーたちが投資している間はよいが、2016年にはアメリカのベビーブーマーは一斉に引退し株を売り始めることになる。 世の中にはお金に臆病な人が多く、もし株の暴落が始まったら、皆がパニックに陥って、更なる暴落を引き起こすのだ。
 いちはやく団塊の世代が引退を始める日本でも社会保障では同様の問題を抱えている。日本も次のような不安が現実としてある。
・課税対象となる所得の果てしない拡大
・退職年齢の引き上げ
・給付金の一部への課税
・保障の減額

 私が読んだ範囲では「金持ち父さん」シリーズで一貫しているのは、しっかりしたフィナンシャル教育を身につけることを勧めている点だ。 株暴落もしっかりしたフィナンシャル教育を受けている人にとってはチャンスでもある、という。 副題にもある「方舟」とはノアの方舟に喩えたもので、必ずしも安心・安全が保障されない時代に生き残れるよう準備しろと言っているのだ。 状況がよいときにうまくやれるよう、また状況が悪いときに更にうまくやれるよう備えるために何をしたらよいか、本書には書かれている。

○印象的な言葉
・人生の経済的な側面をコントロールする力
・未来を見通す能力を高める
・展開に基づいて行動を起こすだけの信念と勇気
・最前線での経験からのみ得られる教え
・速く学びたいと思ったら、自分が何かを知らないことを認める
・フィナンシャル・プランニング業界の成長。投資教育・アドバイスへの需要の高まり
・1929年の株暴落で市場は25年近く下がり続けた。国民の大部分がポートフォリオの80%を失った
・極少数の優良企業が発行する株を狙う投信が増えているため、それらの株価が高くなる。購入コストが高くなる
・401kは税の支払いを先送りするだけ。換金したときのキャピタルゲインにはしっかり課税される
・どんな市場も欲と恐怖によって動かされている
・貧乏な人にお金を与えるのは貧乏な人を増やすだけ
・お金があるのに、それを失うのが怖くて、お金がないのと同じような切り詰めた暮らしをしている。
・調査しなければならないことがあまりにたくさんある場合、どこかおかしい
・一貫性を持った人間
・「時間がない」という人は「時間を作るつもりがない」ということ
・多くの人は諦めるのが早過ぎる。ゲームに対する愛情が冷静さを保つ
・未来を見る方法の一つ:大きくなりすぎたものに注目。それに代わる小さな、目では見えないものに注意する
・投信が資金を分散投資するため、優良企業以外の株が実力以上に買われることに
・ビジネスオーナーに一番大事な技能はセールス能力
・富とは生活水準を下げずに働かずに生き延びられる日数
・悪い状況になると人間の一番いいところが発揮される。自分の中にヒーローがいることに気付く

-目次-
第1部 おとぎ話はもう通用しない?
第2部 方舟を造る