読書メモ

・「女性の品格
(坂東 眞理子:著、PHP新書 \720) : 2007.08.18

内容と感想:
 
最近の朝青龍の巡業ずる休み問題もあって「横綱の品格」とか「品格」という言葉が流行だ。 「国家の品格」という本もあったが、本書は「品格ある国家は品格ある個人の存在が前提」という視点で書かれている。
 あえて女性である著者が本書を書こうとした理由を「はじめに」で3つ挙げている。1つは現代社会における女性の生き方、役割が大きく変わったにもかかわらず、 新しい基準が確率せず、混乱が見られること。2つ目は女性の社会進出が進んだが、そこで従来の男性社会の轍を踏むように権力志向、拝金志向に なってはならぬ、という点。3つ目は家庭の幸せだけを考えるのではなく、地球レベルの品格ある生き方が求められる、ということ。 そして「あとがき」では品格を身につけた女性に「真のリーダーとなる女性になって欲しい」と言っている。 そうなるために本書では、品格ある暮らし方、装い方、話し方といったハウツー的なものと、生き方や行動規範に関わるものを解説している。
 海外では女性大統領や女性首相などが誕生した国もある。 品格ある女性が増えたとしても、品のない男ばかりの男性社会によって彼女らの台頭が阻まれるようであってはならない。 女性宰相が生まれるような社会は男がだらしないから、とも言えるが、よく言えばそれを受け入れる素地がある、 レベルの高い成熟した社会とも言える。
 勿論、本書は女性に読んで欲しい本だが、私が本書に興味を持ったのも、 男から見る(男が求めている)女性の品格と女性自身が考えている品格との微妙(大きい?)な差を知りたいと思ったからだ。 女性の品格と、いわゆる「女性らしさ」、セクシーさとは大きな開きがあるだろう。 品格を重視しすぎると気取っているとか、上品ぶっているとか同姓からも批判されるかも知れない。 鼻につかないよう「自然な、身の丈に合った上品さ」が一番なのではないだろうか?
 本書ではたくさんノウハウ的なものから基準までピックアップされているが、いずれも付け焼刃では身につかないだろう。 日々、意識して実践し身体に馴染ませていくしかない。多くの日本人女性は本書をどう捉えたのだろう?
 第六章の「日本の企業の品格、日本人の品格を高めてきたのは、いい加減な仕事で妥協しない職人たち、正直に仕事を積み重ねてきた無名の人たち」 という言葉は、不祥事が明らかになり謝罪する企業経営陣の姿を目にすることが多い昨今、彼らに読ませたい。 トップや経営陣がいい加減なことをしていると社員を路頭に迷わすだけでなく、企業の品格も信頼も失墜させる、 場合によっては日本のイメージも貶めることになると自覚して欲しい。

○印象的な言葉
・信頼:小さなことの積み重ね
・型どおりのお祝い:名乗り、主催者を祝い、会の趣旨に賛意を示す。エピソードを1つ紹介
・良いパーティ客:主催者の心遣いや招待に感謝、楽しく振る舞い周囲の人と打ち解け、会を盛り上げるよう協力する
・敬語:相手との距離感に応じて使い分ける。年齢や職位の上下に関係なく、よほど親しくなるまでは敬語・丁寧語
・江戸時代の町人は表着は規制があり自由にお洒落を楽しめなかった。その代わり、インナーに粋を凝らし贅沢をした
・自己評価格差:よくなりたいという夢を捨てている。このままでいいと人生を降りているのが問題
・日本人は清潔を重視して洗いすぎるため常在菌をなくし、肌荒れ、薄毛をもたらしている
・店への苦情は責任者に言う。よくなってもらうためのアドバイスの気持ちで
・頑張っている個人商店を贔屓にする
・地方で公共交通機関が少ないところでは車で高齢者や障害者の送り迎えをするボランティアが求められている
・季節感を味わいながら買い物をする、季節の移ろいを食べ物で楽しむ
・花や木の名前を知ることは自然をいとおしむ態度
・立食パーティは食べるのはほどほどに。色々な人と話すことを心がける
・ある程度の距離をおき、礼儀正しく、べたべたしないお付き合い
・淡々と心を乱されず、相手の成功や幸運を祝福する
・一人で生きていけること。群れると自分自身で判断しなくなる
・感謝のサンキューブック:受けた親切や助けを忘れない。独りで生きてきたのではない
・他人に任せるほうが「後継者を育てている」と評価される。人を育て自由になった時間で他人ができない仕事をする
・人脈作りは裏方の仕事をするのが一番
・人の心の温かさ、自然の美しさを味わう心のゆとり。些細なおかしみを楽しむ明るい心
・マスコミは善悪で割り切る傾向がある。現実はいいこと、悪いことが分かちがたく絡み合っているもの
・女性がしっかり男性を選ぶことで世の中は変わる。品格重視→男は品格を身につけようと切磋琢磨→日本の品格アップ
・お蔭様と感謝を表しながら黙って実力を蓄え、一目おかれる存在になる
・欲望を追いかけているだけでは幸せな人生は送れない。欲望をコントロール
・先の大戦の開戦の原因は「言うべきことを、言うべきポストにいた人が発言しなかったから」

-目次-
第1章 マナーと品格
第2章 品格のある言葉と話し方
第3章 品格ある装い
第4章 品格のある暮らし
第5章 品格ある人間関係
第6章 品格のある行動
第7章 品格のある生き方