読書メモ

・「ベトナム株 〜沸騰するアジア最後の市場
(迫川 敏明 :著、アスキー新書 \720) : 2007.06.27

内容と感想:
 
ベトナムへの企業進出コンサルタントが書いたベトナム企業の株式投資の勧誘話。
 ポストBRICsと目される新興国の中でも成長著しいのがベトナムだ。 2000年以降のGDP成長率の年平均が7%を超える。 WTOにも加盟し、2006年にはハノイでAPECも開催され、世界からも注目されている。 かつてベトナム戦争を戦った敵国アメリカとも国交を正常化し、2005年には最大の輸出相手国になっている。 日本企業の進出も広がり、日本からの直接投資もベトナム経済の発展に貢献している。 既に中国も急成長を続け、多くの日本企業が進出しているが、中国に依存したビジネスモデルに危機感を覚えるようになってきたことも ベトナム移転を促している。
 急成長を牽引するのは工業部門で、2005年にはGDPの40%を占めるまでになった。 国営企業の民営化が急速に進んでいる。2006年には4年以内の民営化・株式会社化が義務付けられたそうだ。 国は海外企業誘致のために土地も放出している。 若くて優秀な労働力が豊富で、勤勉、高学歴化が進む、90%を超える識字率というからますます成長の期待は高まる。
 そんなベトナムの株式事情だが、日本の証券会社経由での株取引はできない。オンライントレードも浸透していない。 現地で証券口座を開設して、売買注文も電話やメール、FAXでやるしかない、というように使い勝手は悪い。 最近ではベトナム企業の株を扱ったファンドを日本の証券会社が取り扱うようになってきている。 外国人の口座はまだ2,500ほどで、そのうちの1,000口座は日本人のものらしい。 上場銘柄はわずか200。本書ではそれらの企業の基礎データもリストとして掲載されている。
 投資のリスクとしては、未整備な投資環境、情報が少ないこと。現状、経常収支は赤字、外貨準備も不足していることで、まだ成長途上。 この先何が起きるかも分からない。それはベトナムでなくても似たようなもの。よく研究してから手を出すべきだろう。
 内容は薄いが、興味を持ったら色々調べるとよいだろう。しかし中国ビジネスと比較すると日本語の情報はまだまだ少ないのが現状のようだ。

○ポイント
・越僑:海外のベトナム人。ベトナム統一を嫌い、自由を求めて海外に逃れた人々。南ベトナムの人が多い
・サイゴン(南ベトナムの都市):アジアの真珠
・ドイモイ(刷新)政策:対外開放路線、共産党一党独裁の社会主義国家への市場経済導入。全方位外交
・賄賂が横行。政府は賄賂追放方針を採っている
・コーヒーの輸出量は世界2位
・中国とASEAN諸国をつなぐ「回廊国家」
・漢王朝時代から1,000年に渡り中国に支配されていた。文化的にも中国の強い影響がある
・中越戦争:1979年
・反日感情がない
・資源は豊富とはいえない。手先が器用。職場の定着率が高い
・働くことは美徳。ベトナムも村社会
・貿易量はアメリカ、日本、ついで中国が多い
・政府主要メンバーには南ベトナム出身者が多い。市場主義を知る人が多い
・ベトナム南部沖合いには巨大な油田
・顧客対応が大雑把。おおらか。すぐにバレるような嘘をつく。絶対に謝らない。悪気はない
・日本よりも前に台湾企業が進出し成功している
・中ベトナムのリゾート都市・ダナン。ビーチが綺麗。近くには世界遺産や温泉も
・もし経済危機に見舞われたとしても日本やアメリカが助けるはず

-目次-
第1章 外資がベトナムに注目する5つの理由
第2章 外資誘致に向けて努力するベトナム政府
第3章 実践 ベトナム株
第4章 ベトナム株 基礎データ