読書メモ

・「社長が贈り続けた社員への手紙 ―渡邉美樹の夢をかなえる手紙
(渡邉 美樹:著、中経の文庫 \552) : 2007.11.11

内容と感想:
 
著者はワタミの創業当時から全社員に向けて毎月一通ずつのメッセージを送り続けているという。 それをまとめたのが本書である。 「まえがき」で書いているようにそれは「家族的絆」を前提とした社員へのメッセージであるが、 単なる内輪話だけではなく、経営を通して著者が常日頃考えていることが分かり、ワタミ社員でも何でもない私にも興味深かった。
 第2章で「自然の法則(神の意志)に反しない限りにおいて、時間と予算が無制限であった時、不可能なことはない」と言っている。 著者らしい考えだ。 条件が合えばこの世に不可能なことはないのだ、と言うのだが、現実的には前提条件や制限条件(時間と予算)があり、 その範囲内でゴールを設定しなければならない。勿論、その点にも触れている。
 また、第3章ではドキリとさせられることが書かれている。 会社の内情を知っているアルバイトからの入社希望がないことの理由を並べているが、 このような会社によくないこと(世間に知られては恥ずかしいこと)も本にしてしまってよいのかとも思ったが、 そこも著者らしい。ただ、ドキリとさせられたのは、そのことよりも、 理由に挙げられている理由(内情)が、私自信にも、また私の会社にも当てはまるのではないかという点。
 「社員が明るくのびのびと仕事をし、颯爽として、確信と誇りをもっていて、会社には勢いがある」という理想の会社、 社員にとっても魅力的な会社についても語っている。どうしたらうちの会社もそれに近づけるだろうか、と考えてしまう。
 著者は2006年に政府の教育再生会議委員に就任されているように、教育問題に強い関心をお持ちの方である。 それもあってか、本書の印税は世界中に学校を作るNPO法人へ寄付されるという。

○印象的な言葉
・ワタミの経営目的の1つ「会社の繁栄、社員の幸福、関連会社、取引業者の繁栄、新しき文化の想像、人類社会の発展、人類の幸福への貢献」
・「良い会社」とは「理念の追求度が高い会社、その経営目的に向かって120%の努力を重ねている会社」
・(社員)全員が会社のすべての問題に対して、自分自身が矢面に立っていると認識している会社ほど強い会社
・社員一人ひとりの人間性の向上
・新しい文化をつくるには”異常”であること
・会社の最も大切な財産である「信用」
・「このくらいはいいだろう」という気持ち(甘え)がレベルダウンを生む
・すべて起こることは必然であり、必要である
・創業期のうちに良い文化を植えつける
・誠意ある対応
・10のロス:仕入れ、金銭、時間、経費、人の管理、食材管理、エネルギー、空間、調理、機会
・ストア・コンパリゾン(他チェーン勉強。競合他社と比較)
・外食産業は人で決まる。悪い口コミは早く伝わる
・戦うリーダーの条件。戦いの一つひとつのケジメをつける人。
・トラブル解決ハンドブック
・問題意識の欠如、執念の欠如
・一人ひとりが主人公の会社
・「理と良心」が判断基準になる会社
・昇格への努力:多くのまわりの人へ、いい影響を与える立場になりたい
・素質、環境、偶然、意志の4つの要素が人間をつくっている
・密度の高い仕事、覚悟のある仕事、挑戦心を失わない姿勢、自立心を失わない姿勢
・立ち上げる時、仕組みを作り上げる時が最も時間と手間がかかる
・人生の6本の柱(仕事、家庭、財産、趣味、教養、健康)のバランス
・マネジメントに必要な能力:観察、分析、判断
・仮説を立てる力:経験と知識に比例
・短時間で判断するための「正しい情報」「客観的事実のみ」の報告
・常に「本当かな?」と思える強さ
・習慣になるまで継続の努力を続ける
・30歳まではガムシャラに。社会人としての基礎体力をつくる
・会社は「同志の集合体」
・社員としての不適格者:嘘をつく、現実逃避、努力しない、努力が継続しない、日々のテーマをもたない者
・強い会社は問題発見者が問題解決者。他人事と考えない
・お客様を心から思う気持ち:最愛の人が家に来たときと同じ気持ちで
・上手なことが好きなこと。自信が生まれ、明るくなり、ツキが回ってきて、楽しい人生になる
・税金をたくさん払うこと、雇用創出による社会貢献
・自分自身が「カッコいい」と思えるか
・目標を言葉、数字で詰めていく。理想形を毎日頭に思い描く。想像が潜在意識にまで到達したとき、心身に影響を及ぼす
・人間の本質的要素、徳性。敬する心
・当たり前の中にある「絶対的な素晴らしいこと」
・親を考える時、人は子供に還る。大きくなるまでに子供は親に十分孝行している

-目次-
第1章 心の痛みにアンテナを立てよ!
第2章 逃げるな、休むな、勝つまで戦え!
第3章 君たちみんなが主人公であれ!
第4章 我々にしかできないことがある!
第5章 人間性を高め、己の道を拓け!