読書メモ
・「精神科外来 〜医者とくすりと家族にできること」
(大森 徹郎:著、角川Oneテーマ21 \686) : 2007.04.17
内容と感想:
著者は個人開業の精神科医。臨床の現場で25年間に渡り医療に携わる。
タイトルの「精神科外来」とは心の病の窓口。都内では著者のクリニックのような開業医が増えているそうである。
クリニックの需要が異常に増加しているらしく、需要あるところに供給も増えるのであろう。
地方の状況にも興味があるが、大都市は大都市ならではの環境による症状もあると思われる。
最近はメンタルヘルスへの関心も高く、ネットや書籍などでも多くの情報を入手できるようになっている。
そういった情報をもとに自分は「うつ」かも知れないと、9割の患者は自分の足で診察に訪れるらしい。
精神科医の役割は患者の症状を改善し、本人固有の力を発揮できる状態を作り出すところにある。
心の病には完治したという境界が引けないそうで、罹り始めと、治り際に注意が必要だそうだ。
再発の危険性もある。
医学の進歩は目覚しいが、精神科医療においても、より安全な薬も作られているし、
多くの患者の症例からの蓄積で、効果的な治療法の研究も進んでいる。
どんな病気もそうだが早期発見、早期治療が治りが早い。
私の会社でもときどき産業医が来て、社員の相談に乗っている。
先日、今年度の会社のキックオフがあったがそのとき、ゲストとしてカウンセラーの方が招かれ、講演を
聞く機会があった。そういう機会があるだけでも、自分や周囲へ注意を喚起することになるし、
それまで声が届かなかった人の耳にも入ることになる。
自分の足ですぐに踏み出せるか、また周囲の人間が気付いてあげられるかに懸かっている。
核家族化や単身世帯が増えている近年、自分で気付ける人はよいが、
救いを求めたくとも、どうしようもなくなってギリギリの状態にいる人も多いのではないだろうか。
いつの時代にも心の問題を抱える人はいるようで、その症状も時代とともに変化するようだ。
著者は思春期の心のケアが今後の大きな課題だと指摘している。
○印象的な言葉
・「うつ」は蔓延の傾向にある
・うすうす自覚していても認めたくない自分が気持ちのアクセルを踏む。ぎりぎりの状態にいる。とにかく休養。
仕事を休めないからと言って休まないと、大きな判断ミスをすることもあり、問題を大きくする
・薬は症状を和らげ、安定した睡眠を得て、体力を回復させ、本来の治癒力を高める
・うつ症状と「うつ状態」「憂鬱な気分」とを見極めるのは難しい
・SSRI: うつの新薬。副作用が少なく、うつよりも軽度の「うつ状態」にも使用することが増えた。脳内伝達物質を調整したり、神経系に作用
・自殺者の9割が生前に心の病にかかっていた
・自殺は伝染する。報道の仕方にも問題がある
・眠れない、元気がない、食べられない、の3点がそろったら、うつと想定
・どこが完治なのかは分からない。楽になることが治ったということ。完全によくならなくても症状を自分でコントロールできるようになる
・妄想は認知の歪み。脳の故障・誤作動
・診察での面接で話をすることで症状が取れることもある。患者自身が問題に気付く
・療養後、職場復帰できそうにないなら、人生のあり方を考え直す、いいチャンス
・「まあいいか」とやり過ごす
・抗うつ薬は効果が出るまでに時間がかかる
・過覚醒:身体は疲れているのに、頭の芯のほうが起きている
・高齢化と定年後の長い人生に関連したエピソードが増えている
・心の病は個人の精神機能の歪みや心的葛藤、取り巻く社会文化環境との合作であり、時代とともに変化する
-目次-
1 精神科外来は急増中
2 精神科外来には、こんな人がやって来ます
3 精神科外来は、こんなところです
4 精神科外来の診断と治療
5 医者とくすりにできること
6 家族にできること
7 これからの精神科外来
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