読書メモ

・「リクルートのDNA ―起業家精神とは何か
(江副 浩正:著、角川oneテーマ21 \686) : 2007.09.29

内容と感想:
 
著者はリクルート社の創業者。 リクルート事件のあとは、長い間、名前を聞くことはなかったように思う。 著者は大学生時代のアルバイト経験をもとに仕事を始めた。 卒業後は就職せず、そのまま起業の道を選んだ。当時は「お金と自由が欲しかった」だけだそうだ。
 タイトルの「DNA」はリクルートが「人材輩出企業」と言われるところから来ているらしい。 リクルートやリクルートコスモスOBが社長を務める上場企業が20社近くあると言う。 「社員皆経営者主義」を経営理念のモットー(十ある)の一つに掲げていることもあり、 リクルート社員時代に起業家精神を植えつけられ、”卒業”していく者も多いようだ。 その起業家精神がDNAとなって受け継がれ、拡大発展していく姿をタイトルはよく表している。
 本書はサブタイトルにもあるように「起業家精神」もテーマの一つであるが その内容は著者の自伝とも言えよう。 起業を目指す者にとっては第三章の「成功する起業家の二十ヵ条」が参考になることであろう。
 そのリクルートの経営手法であるが、PC(プロフィット・センター)制というマネジメントシステムを採用。 P.ドラッカーが提唱したもので、考え方は京セラのアメーバと似ている。 組織は自己増殖と細胞分裂を繰り返し、社長とは関わりなく発展していくことを目指す。
 第一章で収益を上げるための3つの方法について述べている:
@.質の高いサービス
A.スピーディな提供
B.低コストで低価格

 このうちリクルートは@とAを重視。節約よりスピードを大切にした、と言っている。 この姿勢は「(業界で)二位になることは我々にとって死」とも言葉からも明確である。
 私もこれまでリクルートの情報誌にはお世話になってきたが、その強みは何と言ってもその検索方法が工夫されていたこと。 今や検索といえば「Google」だが、様々な視点でのインデックスを用意することで紙媒体での検索を容易にしたし、便利であった。 しかも就職情報、中古車、住宅、旅行など情報の分野も様々である。ビジネスモデルを広く活かして来た。
 リクルートが日本社会に果たした役割は非常に大きい。 就職先を選ぶことは人生における大きな決断の一つである。情報誌一冊で多くの企業を比較できる、情報量も多い。 総サラリーマン化を助長したとも言えるし、転職の敷居も低くしたことは良くも悪くもリクルートの功績であろう。
 「おわりに」で経営者という職能について次のように書いている。 経営者には人の好き嫌いを表に出さない、非情な面と温かい面、攻撃と防御といった多面的な要素が求められる、と。 自分は「凡庸な人間」と謙遜しておられるが、凡庸な人間でも精一杯頑張れば、ある程度のことができる、と若い企業家へエールを送って締めくくっている。

○印象的な言葉
・自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ
・他社が真似する商品を作れ
・成功した起業家には名番頭がいる
・時間と金と人を精一杯使う
・新しいお客様と潜在的なお客様が先生。自分の意見を持ってお客様の意見を聞く
・プレイングマネージャ:組織ではキャプテンとメンバーの関係。同時に最も優秀なメンバーであること。やって見せられること。
・江戸時代300年間を通じて実質日本のGDP成長率は平均して年1%前後
・人に会うときは極力一人で伺う。一対一なら他の人を気にせず本音で話せる
・会社のために働く人はいらない。自分のために働く
・オーケストラの指揮者の能力は経営にも通じる。各演奏者の能力を最大限に引き出すと同時に、全体としてのハーモニーを創り出す
・起業するのに素質は必要ない。まずは全部自分でやってみる。何回も失敗して、また懲りずに挑戦する
・正しいかどうかを決めるのは顧客
・社員よりはるかに多いフリーランサーがリクルートの仕事をしている。社員との垣根は低い
・上からの命令なく社員一人一人が自発的に仕事する風土
・入社前の内定者研修による入社前後のギャップの低減
・大勢の前で叱るのは本人の人格を傷付け、自由闊達な組織風土にはマイナス
・よく働き、よく学び、よく遊ぶ

-目次-
第1章 企業風土について
第2章 私が学んだ名起業家の一言
第3章 成功する起業家の条件
第4章 リクルート創業期
第5章 生き生きと働く風土
第6章 情報誌の領域を広げる戦略
第7章 領域の過大な拡大
第8章 早過ぎた新規事業の立ち上げ