読書メモ
・「次世代ウェブ 〜グーグルの次のモデル」
(佐々木 俊尚:著、光文社新書 \760) : 2007.08.26
内容と感想:
2006年にサイト「ITメディア」で著者が日本のネットベンチャーについて連載していた記事を元に書かれた本。
狙いとしてはネットベンチャーに焦点を当てて、Web2.0の世界を描こうというもの。
本書ではWeb2.0ビジネスを展開するベンチャーをいくつか取り上げ取材している。
また、Web1.0世代のヤフーや楽天なども比較の対象として挙げられている。
日本にも元気なネットベンチャーがある、ということで以下のような会社が登場する:
プロローグ ルーク19:「サンプル百貨店」というサイトを運営
第1章 クインランド:ナレッジマネジメントシステムやゲーム情報サイトのGlep、オーケイウェブ:掲示板運営やFAQ管理ソフト
第4章 ミクシィ:SNS、ジークレスト:オンラインゲームサイト「@games」
第5章 占いサイト「アゲウン」
第7章 音楽配信サイト「mF247」
第8章 エニグモ:ブロガー向けプレスリリース配信「プレスブログ」
「Web2.0」的な会社といえばグーグルだが、まだまだネットビジネスは進化の過程にあり、グーグルのビジネスがいつまでも磐石とは言いがたい。
日本にもビジネスチャンスがあることを著者は示唆している。
例えば日本が世界最先端を行く技術である画像認識、リアルタイム処理、センサーなどを利用したもの。
映像ハンドリング技術も世界のトップクラスだし、自然文や対話による検索、音声認識技術にも優れている。
リアルタイム性に優れた組込み系の技術で世界をリードしてきた日本が「検索」の分野で巻き返す余地は十分あると著者は言う。
これは日本でネットベンチャーに飛び込もうとする者には一つのヒントになると思う。
さて、ネットビジネスもよいがWeb2.0のような次世代ウェブ技術はビジネスだけでなく、政治にも影響を与える可能性を持っている。
従来よりもネットを通して国民が声を上げやすくなり、民主主義のあり方さえ変える力を持っている。
昨今の政治不信、政治への無関心の広がりは国を危うくする。
そう感じている国民は多いはず。従来の代議制ではもう駄目なのではないか?
直接、国民の声が国家運営に反映される、直接民主主義により近い形態を模索してはどうかと思うのだが。
そのためにも多くの声を上げるべきだし、雑多なその声を整理し、総合的に判断・決断できる政治家を国会に送り込まないと何も変わらない。
○印象的な言葉
・多くの中小企業はネットとは無縁。地方の零細企業はロングテール
・マスマーケティングからナノマーケティングへ
・ベンチャーの成功は、卓越した技術に裏打ちされた秀逸なビジネスモデル、資金、人の三本柱が成立することにかかっている
・買い物の意思決定に必要な情報源:専門家のアドバイス、先行ユーザの声、製品カタログや広告
・巨大な物流倉庫を全国の小規模店舗にアメーバのように分散させることで置き換える
・個人の行動の蓄積そのものが自動的に巨大なデータベースになっていく
・Web3.0はインフラも情報処理もピアに分散して、ユーザ側でコントロールするP2P型。ネットワークの理想像
・グーグルは求めている結果をきちんとユーザの目の前に提示するという検索エンジンの基本的な性能が傑出
・iPodはH/Wとアプリケーション(iTunes)、販売サイト(iTS)の3つのレイヤを押さえたことで、プラットフォームとなった
・垂直統合モデル
・ブロードバンド用通信回線はしょせんコモディティ(日用品)であって、他社とも代替可能。プラットフォームとしては弱い
・ペーパーボーイの「カラーミー・ショップ」:最低月額¥875の格安オンラインショップ向けASPサービス
・韓国製オンラインゲームは戦闘主体、日本は他のプレーヤーとの協力や生産、趣味などを主体
・パーソナライズ検索:ユーザの好みに合わせて検索結果を調整
・外界からの影響や、その日の気分を考慮に入れた情報検索・収集技術
・集合知は多数決の原理、民主主義的だが、衆愚に陥る恐れもある。しかし真実は多数決では決まらない
・サイバーカスケード:集団分極化。タコツボコミュニティ。
・ソーシャライズ
・コンテンツマッチング広告は動画や音声の世界にも進出する
-目次-
プロローグ
第1章 源流――「おせっかい」なビジネスモデル
第2章 進化――復古運動としてのWeb2.0
第3章 変化――「地主制度2・0」と楽天の岐路
第4章 融合――交差するヤフーとミクシィ
第5章 期待――グーグルを超える「UFOキャッチャー」
第6章 鉱脈――「リアル世界」に進出する日本の検索エンジン
第7章 進出――「無料経済」下の収益モデル
第8章 打破――キーワードは「リスペクト」
あとがき
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