読書メモ
・「日本史漫遊編」
(井沢元彦:著、小学館文庫 \438) : 2007.05.12
内容と感想:
「逆説の日本史」シリーズの著者が様々な分野の専門家と日本史について対談したもの。
著者は「あとがき」で書いているように対談の利点として、自分の知らない分野を最も効率よく勉強する手段である、
と言う。確かにそのとおりで文献をあれこれ探して調べるより、専門家に直接聞いたほうが手っ取り早い。
また立場や視点の違う人間が様々な角度から見ることで(対談の中で)新たな真実が見えてくるという効用もあるようだ。
一人で本を読んでいるのも楽しいが、同じことに興味をもつ人と話すことで、情報収集できたり、新たな発見もあるものだ。
なにもそれは日本史に限ったことではない。仕事においても同様である。
一人で行き詰ったときは悶々としていないで、他人の智恵を借りること。正解は得られなくともヒントがもらえたりするものだ。
○ポイント
・古墳:天皇の墓ですらどれが誰のものかよく分かっていないものが多い
・摂政関白の家の墓でもなかったりする。寺の裏山のどこかだったりする。集団の墓地という意識
・東北には義経の通過伝説や滞在伝説がある。北海道にも同様な伝説がある。
・義経の戦略はゲリラ戦
・実は蘇我一族は皇位を簒奪した。その時期があった。しかし全滅させられた。それが万世一系の皇統を生む要因になった
・蘇我氏は渡来系。大陸の易姓革命を信奉していた
・平安中期頃から天皇とは言わず「院」を使うようになる。その後、江戸中期から復活。
・天皇の権威は承久の乱から下がり始め、義満のころにどん底になり、戦国時代から上がっていった
・信長が10万の軍団を動かしていた頃、欧州は統一国家ではなく、100人単位で戦っていた。新大陸でのスペイン、ポルトガルでさえそう。
・謙信は5,000人でどれだけの大軍とでも戦えた
・信長の領国では税金が安く、物資も豊富になる。庶民には歓迎された
・光秀は気が小さい。城攻めはうまいが、野戦は絶対しない。
・良寛は布教活動を一切しなかった。
・反論しないで黙っているのは、相手の言うことを尊重していないこと
・邪馬台国の読み方は3世紀(卑弥呼の時代)の中国の発音なら「ヤマド」であり、”大和”朝廷とも似ている
・3世紀頃の前方後円墳(大和朝廷を象徴)が次々に発見されている。大和朝廷は卑弥呼の時代から大和地方にあったことになる
-目次-
第1章 天皇陵の謎の解明で今すべきこと(森浩一)
第2章 義経北行伝説の点と線(高橋克彦)
第3章 天皇になろうとした足利義満の野望(半藤一利、今谷明)
第4章 信長軍団は世界最強だった!(津本陽)
第5章 忠臣蔵の人気の秘密とその虚実(松島栄一、皆川博子)
第6章 書から見た良寛の人物像とは(鈴木史楼)
第7章 日本はどこへ行くのか(桂三枝)
第8章 日本人を支配する宗教「穢れと言霊」(松本道弘)
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