読書メモ

・「マーケティングを学ぶ人のためのコトラー入門
(片山 又一郎:著、日本実業出版社  \1,600) : 2007.12.15

内容と感想:
 
コトラーは「マーケティングの代名詞」とも言われるそうだ。 本書ではマーケティング学界の第一人者、フィリップ・コトラー教授の理論を初心者にも分かりやすいように、 コトラーの著作からエッセンスを抜き出した。著者なりの解釈も加え、「コトラーの世界」へのナビゲーター役を果たそうとしている。
 コトラーは経営コンサルタントの顔も持ち、その理論には経験、体験が活かされているだけに長く高い支持を得ている。 「マーケティング・マネジメント」はマーケティングの最高のテキストと言われている。 本書の1章ではコトラーのマーケティング理論の概要を説明し、以降の各章では、コトラーの4つの研究領域について、 それぞれ事例なども挙げながら解説している。
 本書を手に取ったのも、一技術者として必ずしも良い製品が売れるとは限らないこと、営業が強ければ売れるとは限らないこと、を意識するようになったからだ。 時代は変化している。人の嗜好も変化している。特に経済成長が天井を打った日本では従来の売り方を変えていかなければいけない時期だ。 そこで重要になってくるのがマーケティングだと思うようになった。企業だけでなく、非営利組織のためのソーシャル・マーケティングについても コトラーは一つの研究領域として捉えている。私は国家運営にもマーケティングの思考が必要だと感じる。 グローバル化の中で日本の価値を世界に受け入れてもらえるようなマーケティング戦略が日本の復活のためにも重要となるだろう。
 コトラーは時代を先取りし、近年、デジタル・マーケティングにも関心を寄せているそうで、 今は情報を機軸とするデジタルエコノミー、ニューエコノミーの時代として、新たな研究領域にも取り組んでいるようだ。
 例えば、インターネットの発達により、ネットが顧客優位を加速させている。 従来と違って主導権が買い手に移行してるのだ。ニーズが多様化して、企業は情報システムによって、多様なニーズに応えようとしている。 そのため企業はそこにビジネスチャンスがあるとして、ニーズごとのミニ市場をターゲットにした、ダイレクト・マーケティングにシフトしようとしている。 またデータベース・マーケティングで消費者一人ひとりにアプローチできるようになった。 顧客が企画、製造に参画したり、企業間のコラボレーション(協働)が拡がっているのもITのおかげだ。 パーミッション・マーケティングは顧客に打診して、パーミッション(了解)を得ることから始める。これも消費者主導の マーケティングである。従来の土足で上がりこむような高圧的なマーケティングは消費者に拒否されるのだ。
 もっと勉強したい方は原書の「マーケティング・マネジメント」に取り組むといいそうだ。

○印象的な言葉
・コトラーの関心、研究の範囲はグローバルに拡がっている
・コトラーの業績はマーケティングの計画、実行、管理など全プロセスに渡る
・コトラーは時代の動きに敏感。それに適応し、先取りも。姿勢は柔軟だが、基本的枠組みはしっかりと構築。
・マーケティングは売り込むのではなく、売れていくようにすること(P.F.ドラッカー)
・企業の最大の資産は顧客、およびその満足
・マーケティングに中心的な役割を与える。企業の単なる一機能ではない
・サービスは生産と消費が同時。無形、分離できない、変化する、消滅する、貯えられない
・社員一人ひとりが「社員稼業」の気持ちで:どんな仕事も一つの経営と観念する(松下幸之助)。
・自社製品のうち少なくとも一つが常に成長期になければならない。同時に次の成長期を担う製品の導入・育成をはかる。
・ロジスティクス:生産、販売、流通全体の最適化、効率化を求めた結果の戦略。一方で顧客サービスの面が希薄に?
・プロモーション・ミックス:広告(空軍)、販売促進(戦車隊)、人的販売(歩兵)、PR活動、ダイレクト・マーケティング。
・広告:知らせる(導入期)、説得する(成長期)、思い出させる(成熟期)
・マーケティングやセールスとは市場や顧客から「宿題」(テーマ)をいただき続けること(村田昭治)
・営業マンに必要なソリューション(問題解決)能力。問題発見。顧客からパートナーとして。企業同士のキーマンとして。
・満足保証:不満があれば無条件で返品、返金。欧米では当たり前。不満の輪が広がらないよう、苦情を多く吸収する仕組み
・インターナル・マーケティング:従業員の満足度を高める。その満足は消費者、顧客に伝染する。社員を内部顧客と見る。
・優先順位は社員、消費者、株主(ヴァージン・グループのR.ブランソン)
・有能な人材とは従業員を刺激し士気を高め、その長所を引き出す能力にたけた人(同)
・社員を締めれば締めるほど、感動がなくなっていく(中谷彰宏)
・経営者は社員を愛し、信頼する、大切にする。
・教会が広告をしないでも信者を集められるのは日頃から様々な方法で人々に働きかけているから
・グリーン・コンシューマ:21世紀型の新しい消費者。環境に配慮した製品を購入。地球環境問題では消費者も共犯。
・顧客をすべて平等に扱うことは不合理で、顧客側からしても悪平等。顧客との付き合いも差別化
・マーケティング活動の支出はコストではなく投資。そこで形成された顧客とのリレーションシップは無形資産。

-目次-
序章 マーケティングとコトラー
1章 コトラーのハイライト
2章 マーケティングの基本
3章 マーケティングの戦略
4章 ソーシャル・マーケティング
終章 進化するコトラー