読書メモ

・「中国古典からもらった「不思議な力」
(北尾 吉孝:著, 三笠書房 \1,400) : 2007.03.03

内容と感想:
 
北尾氏の名前を知ったのはホリエモンのライブドアが、経営権奪取を目的とした大量のニッポン放送株式を取得した騒動で ホワイトナイトとして登場したときであった。そのときよりも後に、TV東京の村上龍の番組でゲスト出演されたときの印象が大きい。 なかなか経営者の生の声を聞く機会はないから面白かった。 SBIホールディングを核に数多くの企業を傘下に置くSBIグループの総帥である。 その彼の成功の裏には中国古典から学んだ智恵が精神的な支柱としてあることを本書で知った。
 本書では人生をより楽しく充実して送るためとして以下の4つのテーマを挙げている:
・運を強くする
・人生を心豊かに楽しくしていく
・リーダーに求められる資質を学ぶ
・仕事を成功させる知恵

 2章以下の各章でこれらについて中国の古典を引用して、自らの考えや経験を述べられている。 その中でも運の強化の仕方については「正しい倫理的な価値観を持って、努力と忍耐で強い自分を作ること」だそうだ。 努力して運気を変えていくのだ。
 「論語」などの古典が現代の世にも読み継がれているのは時空を超えた普遍的な智恵がたくさん詰まっているからであろう。 古典を国語の時間の教材だけに留めておくのは勿体ないのだ。
 著者は本書の中で日本経済への不安を述べている。国の財政が破綻してきている、もう消費税を上げるしかないところまできている、という。 国は国債を個人に売り、海外にも売り、といったように日本はでたらめな方向に向かっていると。 そんな危機的な状況の日本で生きていくためにも個々人が中国古典から学び、人生を、そして日本をより良くするために行動していく必要がある。

○印象的な言葉
・中国古典には読み返すたびに新しい発見がある。それがもつ深みのため。反省材料を提供してくれる。実践的。
・人生は「判断」の連続。中国古典から「ブレない判断」の基準を掴む
・判断し行動に移す。結果がどうであれ「天命である」と肚をくくる。心の平静を保ち、「知」と「徳」を修め、磨き続ける
・中国古典はすべての東洋人の教養の根幹
・日本古来の伝統的精神は神道、仏教、儒学が融合してできた。古来日本人は「精神的タフネス」を誇った。その継承は現在、極めて弱い
・「論語」はいつの世の中でも通用する実学、活学
・経済界が正しい倫理的価値観を持つ必要性
・自己実現のためにはそれなりのポジションに就く必要がある
・当事者意識で考える。思考力強化になる
・絶対絶命の境地に自分を追いやる。そこから生き残ってこそ強い自分ができる
・ソフトバンクの孫社長は自らを崖っぷちに置いて戦っている珍しい経営者
・「ベストを尽くすこと」の積み重ねが、いい人生につながる
・親には子供を世の中のためになるように育てる責任がある
・自分に起きたことは天命、すべて天のせいにしてしまう。やるべきことをやった上で先のことは天に任せる(任天)
・日和見主義、事なかれ主義は不誠実
・一つのことを一所懸命やっていると、そのものごとについて予見できるようになる
・人材を見るときにはその人の人生観、仕事観、世界観を大きくとらえてつかむ
・広い視野と深みのある知識、見識
・徳の高い人には共鳴者が集まる
・自分だけでできることはたかが知れている
・自分以上の存在がいることを信じるから自分を律することができる
・3つの思考力:長期的な思考、多面的な思考、根本的(大局的)思考
・自分一代で終わるのは野心、志は次の代に引き継がれる
・経営理念はアメリカではミッション。企業の価値観や目標、働く目的を示すより長期的で普遍的なもの。 ビジョンは夢やロマンを含みながらも会社の将来像を具体的に示す中期的なもの。
・タイミング・イズ・エヴリシング
・提案する際は3つの代替案を用意する。多くの可能性を考え、最適な選択ができる準備をする

-目次-
1章 絶対うまくいく!―この「自信」はどこから生まれるか
2章 いい仕事がしたければ、自分で「運」を強くしろ!
3章 何をやるか、どうやるか―人生の五計
4章 北尾吉孝の「人を動かす人」養成塾
5章 「策に三策あり」―「1+1」を5にする私の仕事術