読書メモ

・「ビジネス革新の極意
(鈴木 敏文、齋藤 孝:著、マガジンハウス \1,300) : 2007.04.14

内容と感想:
 
鈴木氏は「イトーヨーカ堂の」、というよりも「セブンイレブンの」会長と言ったほうが分かりやすいかも知れない。 その鈴木氏と齋藤氏とのビジネス、教育談義。 中央大学の理事長も勤めている鈴木氏は教育にも関心が強い。
 コンビニ全盛の時代。セブンイレブン成功の秘密や業界の裏話的な話題などもあり興味深い。 日本人は豊かになり「欲しいものがない時代」とも言われる近年。 そういう時代に「心理学経営」で日本人のニーズを捉え、あるときはニーズを引き出す鈴木氏の経営。経営のヒントが得られるだろう。
 現代人は価値観が多様化したと言われるが、実はその逆の一極集中的な動きがあることは対談の中にも出てくる。 みんなが買っているから買う、という心理。 一箇所に一時的に殺到しベストセラーやミリオンセラーといわれるヒット商品が生まれるが、そのサイクルは短く、すぐに飽きられる。 コンビニの店内の商品サイクルも非常に短いと聞く。飲料・食料品メーカーはコンビニの動向を非常に重視し、気を使っているそうである。
 消費者が飽きっぽくなってきているのもあるのだろうが、次から次へと投入される商品の数々。飽きっぽいコンビニ・ヘビーユーザにはよいかも知れないが。 これではメーカーの過当競争が際限なく続き、疲弊しないかと心配になる。過剰に売れ筋、死に筋を気にしすぎていることはないだろうか? データ重視の弊害もあるのではないか。じっくり育てる商品もあるかも知れない。自分がせっかく気に入った商品がいつの間にか店頭から消えているのは悲しい。 消費者の意識やライフスタイルに定着する商品とはきっと最大公約数的なものになると思われるが、 コンビニ店内がそういう商品ばかりに満たされ、”定着”したときに、ある意味で「コンビニは終わる」のだろうか?

○印象的な言葉
・情報をインスパイアされやすい、余裕のある身体を作る
・マニュアルは変化のスピードに耐えられない
・日本人の価値観は多様化しているのではなく、画一的な行動パターンになっている
・顧客の信頼は基本の徹底から
・スピードの時代に取り残されている大学
・「平等」より「公平」
・フェイス・トゥ・フェイス:直接会う時の緊張感が会話の質を高める。情報伝達のロスが少ない
・ハウツー本は読むな。自分達の問題は自分達で解決する
・軽さや素直さがプライドより大事
・マニュアル経営を全面否定。不要、有害
・「お客様のために」ではなく、「お客様の立場で」
・記憶力重視のトレーニングが主体性を妨げるというのは誤った幻想
・目的買いが少なくなり、衝動買いが多くなってきた。群れが動くと自分も動いてしまう
・幸せは時間が過ぎると当たり前になってしまう
・先行き不安から無駄な消費を抑え、貯蓄に回している今。きっかけさえあれば、どこかで発散したい
・現状に安住してしまいがちな自分自身こそ、戦うべき相手
・マンネリの打破:それまでのやり方を否定
・関心と情報を集め、それをどれだけ整理しているかが決め手
・小売業は労働集約型産業。働く人のモラルの高さで経営状況は決まる。
・内輪だけでやっていると、陳腐な発想に陥る
・大学は学生や世の中と歯車が合っていない。純粋培養みたいなところ。小さな力関係のしがらみにとらわれたまま。社会との接点がない人の集団。
・社会に求められている人間を輩出できない大学は人気が落ちていく
・面接は常識を持っているかを見る。例外を除く、という観点。
・成功してきた頃の日本は競争心をフェアに育てていた
・経営者の人柄が決定的に重要な時代
・心を心でコントロールするのは難しい。身体を変えることで心のあり方を変える
・生産性の高い身体:柔らかく、レスポンス・応答・反応がいい身体
・インナーゲーム理論:現状を把握するだけで、現状を変えられる。現状を自覚するだけで、意識は目覚める

-目次-
第1章 徹底力・実行力を生み出すコミュニケーション術 ―「生きた対話」から新しいアイディアが生まれる
第2章 情報を集め、ビジネスに活かす方法
第3章 過去の成功体験を否定し、新しい型を生み出す
第4章 変化の激しい時代には、仮説・実行・検証こそ不可欠
第5章 ニーズを感知し、人々を刺激するイベントの必要性
第6章 お客様の心を読み取る鈴木流「心理学経営」 ―消費は「経済学」ではなく、「心理学」で考える
第7章 基本に徹し、変化する時代のスピードに対応する
第8章 常識を破り、常に新しいことに挑戦し続ける
第9章 大学も学生も、大きく変わることを求められている ―中央大学理事長、明治大学教授の立場から
第10章 これからの日本のあり得べき姿とは ―悪平等からは何も生まれない、フェアな競争社会の実現を