読書メモ

・「トヨタの上司は現場で何を伝えているのか
(若松 義人:著、PHP新書 \720) : 2007.09.09

内容と感想:
 
著者は元トヨタ・マンで、大野耐一とともに「トヨタ生産方式」の実践・改善・普及に努めて来られた。 本書はトヨタの現場で伝えられ、語られている「トヨタ語」、「大野耐一語」の名言集。 目次を見れば分かるように様々な”言葉”が並ぶ。人は言葉で考え、言葉で動くのだ。 だからトヨタは言葉を大事にする。 本書だけでも「トヨタ式」の改善のエッセンスを知り、改善のヒントとすることが出来るだろう。
 「人を大切にする」トヨタは人づくり、”人財”育成が上手いと言われる。 トヨタは「知恵の出る人間」を育てることを常に考えている。 知恵には限界がない、人間の可能性を信じる、という信念が時間のかかる人材育成を支えている。 「人は困らなければ知恵が出ない」ということで、知恵を引き出すために、 「困った状態を作り出す」ためにトヨタは並外れたことをやるそうだ。 それは解決困難に思える無理難題を与える、とか一見なんの問題もないところをじっと観察させる、など。 従ってトヨタの上司は管理者であると同時に、部下にとって師匠、教育者でなければならない。 部下は師匠の恩を、更に自分の部下を育てることで恩返しする。この好循環がトヨタの強みなのだろう。

○印象的な言葉
・言い訳する頭で実行することを考えよ
・失敗を向上のステップに。いい失敗には責任を問わない
・現場の理解と納得を得よう、知恵を引き出そう。教えるのではなく引き出す
・二割差では追いつかれる
・停滞とは後退
・二階級上の立場で考えろ
・選ぶより育てる
・どうすればラクになるか考えろ
・指示されてはつまらない
・標準作業:誰もができる仕事に。熟練工に頼らない
・部署間のヨコテン(横展開)
・業界の常識に縛られて発想が限られてくる
・改善ごっこ:目的を忘れ、改善自体が目的になってしまう。
・知恵の出る人間を育てる。現場に考えてもらう。ヒントは出すが答えは与えない
・達成不可能と思える難題に挑戦することが、画期的な発想を生む
・必要なムダ:技術開発、先行投資、人づくり
・ベンチマーキング:優れた相手と自分を比較、分析し、差を一つ一つ埋めていく
・すぐやる課:アイデアはすぐにやってみる
・クレームには一格上が顔を出せ。災害のときは責任者が見に行け
・苦しいときにどう生きるかで品格が決まる
・人間を無理に変えるのではなくシステムを変える。ミスを起こしたくても起こせない環境に変える
・お客様に最も近いところから、お客様に迷惑をかけないように変えていく
・アイデアやコミュニケーションが「冷めない距離」
・社内で作る内製重視:基幹技術を外部委託したら、いざというときに困る。

-目次-
1章 ぬるま湯を出て「成功の風」に乗る言葉
2章 自分革命の「発想源」を掘る言葉
3章 逆風をもうまく受けて「推進力」にする言葉
4章 「まずやる」ことが自然なクセになる言葉
5章 「自分が伸びる」と「人を育てる」が同時に進む言葉
6章 時間がないけれど「すぐ片づく」コツの言葉
7章 「ラクしたい心」が「向上心」に変わる言葉
8章 意欲を磨き「品格」を高める言葉