読書メモ
・「インドビジネス ―驚異の潜在力」
(島田 卓:著, 祥伝社新書 \740) : 2007.02.17
内容と感想:
著者は元は銀行員としてインドでビジネスに関わり、現在もインドビジネスに詳しい方である。
主に世界はインドのIT技術力に注目し、その著しい発展に期待をしている。
我々のいる田舎でも仕事でインド人を見かけることが増えた。
本書はそんなインドビジネスの環境について、著者の経験を踏まえてやさしく解説している。
インドという国、歴史、文化、インド人、その可能性、政治や経済の概要が理解できるだろう。
今後、日本は人口減少と老齢化が進み労働力不足となるのは必至、一方インドは人口が増え職場提供が課題、という。
そのマイナスとマイナスを掛ければプラスになるだろうと、面白いことを書いている。
実際はそんなに簡単にはいかないだろうが、著者が言うようにモノづくりに自信のある国とその基盤整備を進めようとしている国が
組めば相互補完できそうである。
日本は技術者不足が叫ばれ、インドでは優秀なIT技術者を大量に毎年輩出される。日本への技術者供給基地にもなれるだろう。
インドが成長すれば日本が得意な自動車や家電の巨大市場として期待できる。
インドというとカースト制度のイメージが強いが近年は大都市部や周辺では差別がかなり薄れてきているそうである(インド憲法ではカースト差別は禁止されている)。
その一方で持てる者と持たざる者の差別意識が出てきているという。
まだまだ成長過程のインド。注目は続くだろう。目が離せない。
○ポイント
・日印の時差は3時間半
・ネルー初代首相はソ連を模倣した社会主義経済を導入したが(1947年独立)、1991年には経済危機を迎え、経済自由化に踏み切る
・英語をしゃべる優秀な人材が豊富、若者人口が総人口の半数を占める。ゆくゆくは世界最大の人口を有するだろう
・毎年生まれる労働人口は1,200万人。そのうちITビジネスで吸収できるのはせいぜい20〜30万人。残りに対する職場提供が最大課題
・多言語、多民族、多宗教
・日本人ならチャートを使うところを、インド人は全て言葉で表現しようとする。
・インドと仕事をするには自分の求める形に決め付けていくこと
・インドのGDPは製造業が2割、第三次産業が6割といびつな構造
・バンガロール:インドのシリコンバレー。南インド
・IIT:インド工科大学。その出身者らが本場アメリカのシリコンバレーに貢献した。今は彼らが母国に戻り、インドのIT産業発展に貢献。
・ごまかしといい加減さとが天性の生き方
・ソフト輸出の7割がアメリカ向け。最近は非英語圏の市場開拓を進めている
・原油の70%を輸入に頼るがその輸入に必要な外貨はソフト産業と関連事業が稼ぎ出す
・民主主義が行き過ぎて何も決まらない。議論好きで国会審議は長引く
・先方の基準まで降りてあげて、そこから何ができるか考える
・インド人は加算(積み上げ)式でスケジュールをこなすため、どうしても押せ押せになる
・日本人は島国根性を捨て、心を大きく持ち、インド人は変なプライドを捨て、聞く耳を持てばよい
・インド人の口癖「何でも出来る」。あくまで自分の想定内での話で、前提が狂うと出来ずじまいで、言い訳に終始する
・貧困層に属する人が2億7千万人
・アメリカの中国を意識したインド厚遇
・インド人は自分の国を「バーラット」(Bharat)と呼ぶ
-目次-
第1部 誰も語らなかった、インドビジネスの実像とその流儀
第1章 沸騰するインドビジネスを検証する
第2章 インド人のDNAを徹底分析
第3章 インド人の生活実態と世相を知る
第4章 インドビジネスと政治の関わりを読み解く
第2部 これであなたも“インド通” 知っておきたい11億人大陸の全角度最新情報
第5章 世界最大の民主主義国家・インドの国の「かたち」
第6章 アメリカも一目おく、インドの外交戦略
第7章 多言語、多民族…渾然たるインド社会
第8章 「ゼロを発見した国」の教育システム
第9章 悠久の昔から深い絆で結ばれていた「日印関係」
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