読書メモ
・「日本経済に関する7年間の疑問」
(村上 龍:著、生活人新書 \740) : 2007.04.11
内容と感想:
著者自身が編集長として配信するメールマガジン「JMM」月曜版のエッセイを再構成したもの。
そのメルマガの存在は知っていたが購読していないし、テーマが金融・経済であったことは
今回初めて知った。タイトルの「7年間」というのが創刊の1999年3月から7年という意味。
本書には目次にもあるように政治・経済に関する関心事が多いが、それらを我々国民に報道する立場の
大手既存のマスメディアの批判が多いことも印象的だ。
大手既成のマスメディアの問題として「怠慢、偏り、意識の低さ、閉鎖性、タブー」を挙げている。
また、「変化に適応できていない、新しいパラダイムを示すことができていない」とか、
「記者団は総理に質問できるという貴重な立場にありながら、どうすればその職務を果たせるのかと、
死に物狂いで質問を考えているように見えない」、
「相手を追い詰める質問ができない」と記者達の無能振りを嘆いている。
彼らは取材が忙しすぎて、じっくり考える時間がないくらい疲れているか、
先輩記者から引き継いだ従来どおりの質問集みたいなものを見ているだけで何も考えていないのかも知れない。
元NHKの手嶋龍一氏もある本で書いていたが、ジャーナリストは若いうちは夜討ち朝駆けの繰り返しで燃え尽きてしまうらしい。
恐竜になってしまった既成メディアの問題の原因は、そういうシステムにあるのかも知れない。
○印象的な言葉
・自分の日常に変わりがなければ、情報に麻痺していく
・人生をサバイバルしていくには充分な準備が必要だ
・幼い子供は幸福そうで自信に充ちた親を見ると安心する。大人が自信を失って、楽しそうでないので、それが子供に伝染する
・大人は子供たちへネガティブな情報をアナウンスし続けてきた
・希望がない=自分の時間と労力を投資する対象を見つけられない
・才能とは自分の時間と労力を継続的に効率的に投資できること
・勉強したほうが得だ、というきちんとしたモチベーションを大人の社会が示せば、子供は放っておいても勉強する
・企業は元気などなくても、利益を出していればいい。元気であることより、自分の仕事をちゃんとこなすことが大事
・すべての国民の利益になるような所得の再配分は不可能
・最大のデフレ要因は国民の不信感
・多くの人はいずれ増税があると心のどこかで確信している。恐怖や不信や不安を多くの人が心の奥に隠している社会が活性化するわけがない
・受験ビジネスは衰退期を迎える、受験体制の機能不全、受験信奉の崩壊は近いのではないか
・様々な不正やミスや不祥事が露わになっている分、社会は成熟したとも言える
・今の日本にあるのは怒りでも悲しみでも絶望でもなく幻滅。幻滅は人から力を奪ってしまう。単に現実に気付いただけ
・アメリカ人は寂しい人たち。寂しさがフロンティアを常に探し続ける原動力
・身だしなみを汚くしていると、自尊心が失われ、集中力や警戒心や闘争心が次第になくなる
・二択を迫られるのは立場の弱い人で、立場の強い人は二択のような局面をなるべく避けようとする
・現代の視聴者の意識は、徹底的に事実を伝えてくれないと、かえって不安
・社会や経済の状況が変動しても、過去の社会を支配していた言語体系から容易には脱出できない
・メディアが問題を平面化することで利益を受けている層がいる、既得権益層の「ごまかし」に荷担
-目次-
「景気」と「経済」
雇用と職業
小泉政権・構造改革
変化と格差
アメリカと国益
北朝鮮をめぐって
マスメディアと質問
7年間の質問り
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