読書メモ
・「頭がよくなる四字熟語力」
(齋藤 孝:著、角川書店 \1,200) : 2007.09.30
内容と感想:
自分の中ではずっと”四文字”熟語だったのだが、「四字熟語」との言い方もあることを今更ながらに知る。
「四字熟語」のほうが再帰的表現(その名称の中にそれ自身が含まれている)っぽくて言葉遊びとしても面白いと、ふと思った。
本書は「xx力」というタイトルの本が多いという印象の著者が懲りずに放つ本。
「自画自賛」とか」「四面楚歌」といった四字熟語に「力」を付け加えることで、
否定的なイメージの言葉であっても(従来の意味とは違う)プラスの意味合いに変え、生きる力にしようと試みている。
著者の十八番「ずらしの発想法」である。
たくさんの四字熟語が収められているのだが恥ずかしながら中には読めないものや、意味を知らなかったものもある。
本来の意味も書かれているから四字熟語の勉強にもなる。
中でも一番好きなのは「気宇壮大力」だ。スケールの大きな人間になりたいものだ。
ビジネスではグローバリゼーションが進み、スピードが要求される時代。
そこで大事になる力としては「一気呵成力」とか「巧遅拙速力」、「朝令暮改力」、「三日坊主力」が挙げられる。
後ろの2つは良い意味で使われることはないが、ここではあえてプラスに捉えている。
マイナスなイメージの四字熟語で表現されるような行動を漫然と続けているとそれは「力」にはならず「癖」と言う。
どこかでそれを脱する覚悟を持って一時期、それをなすのであれば何らかの力になるかも知れない。
そういう時期も必要な場合もあるが、そこに価値が持たせられるかどうかは、
そこに「けじめ」が付けられるかどうかにかかっている。
巻末で著者は自分の人生を節目ごとに区切り、四字熟語で名付けてみるという提案をしている。
例えば、若い頃は力を溜めている時代であれば「伏竜鳳雛」時代といった風に。
今の私を表現するなら「一進一退」といったところだろうか?
「優柔不断力」というのは日本人の分析として興味深い。
日本人がはっきりものを言わず優柔不断と言われるのにもかかわらず
こうして経済成長を遂げ、生産性を発揮してこられたのも、それを力としてきたからだと著者は言う。
あえて「決められない」ことを利用してきたのだと。即答を避けたい場合もあるからだ。
それが必ずしもよい結果を生むとは思えないが、「失われた10年」を振り返ると、日本は痛みを伴う改革を恐れ、
先送りして優柔不断に時を過ごして来てしまったのだなと考えてしまう。
○印象的な言葉
・漢字は一字で多くの意味を含んでいる。カナやアルファベットのような表音文字にない力がある
・四字熟語を使えば気の利いたコメントになる。色紙に書いても収まりがいい
・四字熟語には短い中に意味が凝縮されている。語感がリズミカルで勢いがある
・四字熟語にはリアルな体感を通して内に取り込みやすい言葉、現実味を持つ言葉が多い
・自分の状況や心情を四字熟語に例えることで、一歩引いて自分を客観的に眺められ、気が楽になる
・若い頃に猪突猛進の感触を経験してきた人は仕事でも、そこで培った瞬発力を発揮できる
・本当にできるかも知れないという可能性を持ち続ける
・天下国家のことを考える
・舞台を別の場所、別の時代に移し、状況を変える
・チャンスは待ち構えている人の所にしか訪れない
・富やエネルギーは貯め込んではいけない。現在はたまたまそこに集まっているだけ
・ハレとケ:祭礼と日常
・情報が信用できるかどうかより、情報を取りまとめている人間の信用が重要
・思いついたとき、その場で、もう後戻りできないところまで一気呵成にやってしまう
・三歩進んで二歩下がる:下がることも反省のために必要なプロセス。後退はしていない
・イギリスには「古いものほど偉い」という価値観がある。威厳と風格。長い歴史に培われた底力
・松尾芭蕉は俳諧という実益には供しない世界を究めることに「無用の用」を感じ、深い意味を見出していた
・虚:社会から光を当てられていない薄い部分、盲点。埋もれているマーケット
・社会が多様化し価値観もばらばらになると大きなかけ声(スローガン)は力にならない
・ダ・ヴィンチは多くの発明をしたがほとんどが物になっていない
・一喜一憂と色即是空を併せ持つ感覚が必要
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