読書メモ
・「ヤネの哲学 熱き表現者たちに宿る騎手魂」
(黒須田 守:著、東邦出版 \1,333) : 2006.06.17
内容と感想:
”ヤネ”とは競馬用語で騎手(ジョッキー)を意味する。競馬では馬7割、人3割という。勝負に影響を与える比率である。
著者は確かに馬の能力が重要なのは分かっているが、それを御する人(騎手)の方にもっと注目してくれと言う。
近年、日本競馬界はサンデーサイレンス産駒の独壇場、あるいは武豊の独壇場であり、著者は競馬への興味も衰えていったと言う。
JRAの馬券の売り上げが毎年、減少傾向にあると報じられるが、単に不況が続いているからだけ、とも言えないだろう。
そういう競馬の状況であるから著者の気持ちも分かるのだが、それでも彼は次第にヤネに興味をもつようになったそうである。
本書はそのヤネへのインタビュー集とも言えるが、単なる対談集ではなく、著者が各騎手の意志、人格、哲学に触れることによって感じたことを
記している。騎手の言葉や態度の裏の裏、心の奥底まで深く観察している。
本書で著者がインタビューしたのは全てJRA所属の騎手で、蛯名、武幸、田中勝、小林淳、飯田、江田、大西、藤田、本田、河内(現在は調教師)など。
その中でも著者が強く惹かれたのが後藤浩輝であり、本書でも多く取り上げられている。
個性的な騎手達の内面をわずかではあるが覗くことができたのは興味深かった。いろんな役者が居て、競馬というドラマが成り立っている、と見ればまた競馬も
面白く見ることができるというもの。
○印象的な言葉
・勝負の世界に身を置く者の研ぎ澄まされた感性、騎手魂、勝負師のメンタリティ
・落馬事故という危険と常日頃から向き合っている、非日常の世界
・騎手は表現者。観戦者に感動を与えたい
・心の底でくすぶっている炎
・運命を受け入れるだけのタフさ、後悔しないだけの強さ、折れそうになる心と戦っている
・折り合いをつけてやりすごす
・負けてたまるか!つぶされてたまるか!
・投げ出さず、あきらめず、逃げ出さず
・ロマンの種を心に置き、感動の芽をさらけ出す
・まずマネから始める、一度吸えるものは全部吸い、いらないものは捨てていく
・怒られることなんか恐れない、責任をとればいい
-目次-
第1章 旅の始まり
第2章 騎手の笑顔
第3章 敗北から得られるもの
第4章 騎手魂のありか
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