読書メモ

・「ワイヤレス・ブロードバンド時代を創る WiMAX
(庄納 崇:著、インプレスコミュニケーションズ \2,095) : 2006.09.15

内容と感想:
 
日本ではADSLや光ファイバー接続によるブロードバンドインターネットが普及している。 これらは主にパソコンなど固定された環境で利用される。一方、ブロードバンドほど高速ではないが携帯電話でもメールやWebブラウジングが可能となっている。 本書で取り上げている「WiMAX」はワイヤレス・ブロードバンド接続を実現する技術である。 携帯電話の移動性(モビリティ)と無線LANの高速性を兼ね備えているため、注目されている。 最大伝送速度75Mbpsがワイヤレスで提供されることになるのだが、その技術の位置づけと今後のビジネス展開、標準化活動などが解説されている。
 既に(株)YOZANが2005年12月より東京で4.9GHz帯において商用サービス(BitStand)を開始している。 こちらは無線版ADSLとも言える固定型のWiMAXサービスである。バックボーンにWiMAX回線を利用したもので、 今後は移動中の無線接続を実現するモバイルWiMAXサービスも計画しているようだ(時速120Kmでの移動も可)。 第7章では日本におけるサービス実用化への取り組みとして、そのYOZANが紹介されている。
 ところでNTTドコモは2006年8月31日に下り方向最大14.4Mbpsのパケット通信が可能なHSDPAサービスを開始した(3.5Gと位置づけられている)。 WiMAXよりスピードこそ劣るもののFOMA 902iシリーズ携帯電話(HSDPA対応機種)でワイヤレス・ブロードバンド接続を実現できるとなると WiMAXと競合する(更に最大40Mbpsまで高速化されるらしい)。 しかし、いずれもサービスエリアの拡大のためには設備投資が課題だ。
 著者がインテルの社員ということもあり第2章ではインテルのWiMAXへの取り組みとWiMAX対応チップの宣伝も。 規格の標準化動向などは第4章を。 日本の電波・周波数事情を知りたいなら第6章を。 多重化や多元接続、アンテナや誤り訂正符号技術など小難しいのが嫌なら第5章は飛ばしてよい。
 常に動き回っている営業マンなどには歓迎される技術だと思うが、私はわざわざ移動しながらブロードバンドで映画を 見たりゲームをしたりしたいと思わないのだが・・。

○ポイント
・IEEE802委員会:1980年2月に設立されたから”802”
・IEEE系のプライベートネットワーク(データ通信指向)と、ITU系のパブリックネットワーク(音声指向)の2つの大きな流れの融合
・有線ブロードバンドが未整備の地域や国ではWiMAXがインフラとして期待される
・固定WiMAX規格「802.16-2004」にモビリティ機能を追加したのが「802.16e」(モバイルWiMAX)
・802.16WG(Working Group)では物理層、MAC層のプロトコルを標準化し、WiMAXフォーラムではそれよりも上のネットワーク層などを規格化
・「WiBro」は「802.16e」をベースにした韓国独自規格。最初からモバイル利用を意識して国を挙げて取り組んでいる

-目次-
第1章 「WiMAX」とは何か?
第2章 インテルのビジネスにおけるWiMAXの位置づけ
第3章 WiMAXが創る新たな市場と3つの展開シナリオ
第4章 802.16標準規格とWiMAXプロファイル
第5章 802.16/WiMAXの要素技術
第6章 WiMAXの周波数帯と日本の周波数事情
第7章 日本におけるWiMAXの展開
第8章 韓国版モバイルWiMAX「WiBro」の展開