読書メモ

・「Web2.0超入門講座 〜初心者でもよくわかる「これからのWeb」のすべて
(小林 祐一郎 :著、インプレスジャパン \880) : 2006.11.04

内容と感想:
 
Webサイト「INTERNET Watch」の同名の連載記事をまとめた本。
 最近、「Web2.0」という言葉をよく見聞きするようになった。新しいバージョンのツールかプロトコルが登場したわけではなく、 Webの世界の変化を概念的に表現している。 2.0とそれ以前との違いをユーザの側面から一言で言えば「読む、見る」だけだったWebが「書き込む、参加する、暮らす、住む」ことも出来るようになった、 ということ。技術的には単なるホームページから、様々なサービスを提供する「Webサービス」になったこと、と言える。 Webを広告媒体として見れば、従来のバナー広告が2.0以前で、キーワード検索結果に連動して広告を変える「キーワード連動型広告」はWeb2.0的ビジネスと言える。
 本書は3部構成で、まず、1〜2章で現在のWebの世界の分析、3〜4章でWeb2.0について整理し、5章以降でWeb2.0の影響を考察する。 Web2.0によって我々の生活がどう変わっていくか、また企業はこれとどうかかわっていけばよいかを考えることができるだろう。
 インターネットの進化でますます便利な世の中になっていく反面、詐欺や誹謗・中傷、個人情報の漏洩など負の側面もある。 そういう時代について最終章では、これからは個人個人の情報リテラシー(情報の選択能力)が求められると言っている。同感である。しかしそれは容易ではない。 経験を積むしかないのだろうか?日々変化するネット。特効薬はないかも知れないが、情報リテラシーを獲得するための役目もネット自身が果たしていくだろう。
 溢れんばかりの情報の海。その海で溺れないためにも「情報の遮断」も必要だとも言っている。また偏った情報に影響され過ぎて視野狭窄に陥らないように注意する必要もある。 無自覚にネットに触れると不幸な結果を生むことになるのだ。
 本書でだいたいのWeb2.0のコンセプトが理解できると思うが、しっかり理解することで新たなビジネスチャンスのヒントにもなる。 しかし何でも出来る、というような過度な期待は禁物だ。一時期のITバブルのようなWeb2.0バブルも起きてもおかしくない。

○ポイント
・ブログ:安いコストでたくさんのコンテンツがが作成され、サイトの価値も上がる。1人のプロより100人の素人。知識も時間もお金もない人でも参加、発言できる。
・SNS:周りの人がたくさん利用しているほど価値が高まる。ネットワーク効果
・β版でのサービス開始:使ってもらいながら改良していく。さっさとサービスを始めて会員数を増やす。変化にも素早く対応
・スケールフリー・ネットワーク:ノード数が増え続け、常に成長し続けている。ノードは好きなノードを選んでリンクする。
→ 大量の情報を高速に扱うDBの技術、大きくなるサーバの負荷をさばく技術などが最重要課題
・集合知の利用:Amazonのユーザによるレビュー、など口コミを利用したサイト。口コミ(バズ、バイラル)マーケティング
・ソフトのバージョンアップを繰り返して売るビジネスはなくなる
・APIの公開:利用されやすいAPIを公開し、考えもしなかった新しいサービスを生み出してもらう。GoogleMap APIやAmazonのAPIなど。
・デバイスを超える:PCに限定しない、携帯電話やカーナビ、ゲーム機、iPodなどでの利用。家電の想像もつかない使い方も?
・リッチ・コンテンツ:Ajaxなどの技術を使った表現豊かなコンテンツ
・コアコンピタンス:競争優位性の核
・ロングテール:チリも積もれば山となる。地味な日記でも続けていれば・・・
・ブログ検索の早さ:RSSの利用でブログ更新が即時に通知される
・持ちつ持たれつ:Give&Take、Win-Win。ユーザと企業が相互に利用し合い、「うまくやる」

-目次-
序章 Webの今、そしてWeb2.0 ―ひとり歩きする話題のキーワード「Web2.0」
第1章 今、Webに起きている変化 ―ホームページは「壁新聞」じゃなくなった
第2章 見えてきたWebの本質 ―スケールフリー・ネットワーク
第3章 「Web2.0とは何か」を読み解くその1 ―「7つの原則」に込められた意味
第4章 「Web2.0とは何か」を読み解くその2 ―Web2.0を理解する、たった2つのポイント
第5章 ロングテールを利用するWebサービスとビジネスの仕組み ―ロングテールの作り方、儲け方
第6章 ブログは「ネットワーク構築装置」 ―日記だけのツールじゃない、ブログの真価
第7章 「Web2.0」を実感するために、経験すべき10のこと ―頭だけでなく、肌感覚としてWebを理解する
第8章 Webの中で「うまくやる」という考え方 ―「ネットワークの中にいる自分」を意識する
第9章 Web2.0時代の情報との付き合い方 ―量・質・流通スピードが変化する中で、いかに情報と向き合っていくか