読書メモ

・「投資情報のカラクリ
(山本 一郎:著、オーエス出版  \1,500) : 2006.09.10

内容と感想:
 
「美人(ブス)投票入門」の著者。引き続き独特の視線で株式投資を語る。 本書では少し前に一世を風靡したギター侍・波田陽区ばりに6つの投資対象をぶった斬っている。
 斬られているのはアニメ業界、M&A関連、中国関連、REIT、バイオ、消費者金融。 一般投資家が目にすることが多いこれらの投資情報の正しい読み方を教えてくれる。 正しい読み方というか滅多斬りにされているわけだから、要するに騙されて後で泣くなよ、と言っているのだ。
 世界に誇る日本のアニメであるが、インターネットのコンテンツとして有望視されているが、 日本のアニメ製作現場の悲惨な状況とその業界の成長力のなさを第1章ではレポートしている。 バイオも掛け声だけは威勢がよいが儲かっているところは少ないようだ。 期待が大きかっただけに落胆も大きい。IPOで損をした投資家も多いだろう。
 もっとも興味深いのは中国関連。中国の経済成長は目覚しいが、既に不動産がバブル化しているそうだ。 このバブルが崩壊したときの影響は日本を始め大きく広がるだろうという見方をしている。 中国の金融システムが崩壊するのではないかとも言う。失業した中国国民が暴れるとも。 北京オリンピック閉幕後が恐ろしい。
 最近、貸金業規正法の貸し出し金利の上限金利引き下げが検討されているが、 この議論が消費者金融業界には逆風になっている。しかし、逆風は今に始まったことではないことが第6章で分かる。 サラ金のテレビCMが当たり前になった昨今、その裏で多くの多重債務者が苦しみ、時には自殺者まで出している現状。 これがいつも頭に浮かんでしまい、この手のテレビCMを目にするたびに不快感をもつのは私だけだろうか? (特に好きな競馬中継番組のあいまにこの手のCMが入るとテンションが下がる)
 話がそれたが、投資情報にもうまい話はないということを肝に銘じよう。

○印象的な言葉
・構造的に歪みが顕著な業界。安値受注が常態化し、集団自殺のようにゆっくりと磨耗してきた
・アニメ業界への人材の流入が細り、人材育成も進まない
・IPOでお金が入り、成長を義務付けられる故に追い立てられるように企業買収を繰り返すベンチャー
・救済されそうな業容の悪い会社の株を仕込む
・潤沢な財務キャッシュフローで「時間を金で買う」買収
・消費者は予想をはるかに超えてダラダラしている
・銀行の不良債権問題での外資系不動産投資会社の幹部の傷害事件がきっかけで、関係のない北朝鮮問題に火がついた
・日本のお金持ちは高級マンションを住み替える
・自己破産件数の増大と消費者金融会社の不良債権残高の急増
・超低金利で資金を調達できる銀行による消費者金融への進出が消費者金融専業への逆風

-目次-
第1章 国際競争力強化などといってるアニメーション産業斬り!
第2章 M&Aしたら株価が上がる妄想斬り!
第3章 猫も杓子も中国バブル斬り!
第4章 なんか新しくておいしそうなREIT(不動産投資信託)斬り!
第5章 幻想のバイオベンチャーバブル斬り!
第6章 甘く危険な消費者金融の誘惑斬り!