読書メモ
・「天才がどんどん生まれてくる組織」
(齋藤孝:著、新潮選書 \1,100) : 2006.03.12
内容と感想:
天才かどうかは別として個人の優れた才能を開花させたり、発揮させたり、伸ばしたり、
また組織としてのパフォーマンスを上げるために人材を如何に育成していくべきか、
について様々な組織を分析し、その優れた仕組みを探る組織論。
サッカーのオランダ代表チームやカルロス・ゴーンの日産、齋藤秀雄の桐朋学園オーケストラや「子供のための音楽教室」、
将棋の奨励会、少年サッカーの清水FC、宝塚音楽学校、江戸時代の藩校、TVのアイドル発掘番組「スター誕生!」、
有名漫画家が集ったトキワ荘、理研などなど様々な分野の個性的な組織を取り上げている。
今、自分が関わっている仕事で技術や知識を多くのメンバーと共有し、互いにレベルアップし、
組織としても成果を上げていくにはどうしていけばよいか、を考えながら読んだ。
第1講では意外にも猿飛佐助が取り上げられている。白土三平の「サスケ」では猿飛佐助とは固有名詞ではなく、
何人も出共有する集団的な名詞だという。猿飛の術を使うものは全て猿飛なのだ。ここで著者が言いたかったことは、
ハイレベルな基本技が共有されている組織は強いということ、優れた「型」によりシステマチックに熟練者を多数養成可能となるということ。
特に最終講義の理研の話は興味深かった。自分が仕事をするなら理想とする組織だろう。研究の自由な気風、自由で創造的な雰囲気。
そういう職場、チームにしたいものだ。
○印象的な言葉
・野球の松坂世代:同学年が目標を高くおいたため世代全体がレベルアップした
・明治維新は意識革命の連鎖による成果。歴史の大きなうねりを自分の使命と感じて仕事を創出した。
・一人一人がマネジメントする立場に立つ
・しっかりしたカリキュラムや工夫のある場
・奨励会は完全に公平な競争原理に立った現代的な組織。徹底的なプロ意識。
・経験も時間も教育欲のある大人がいる町道場がある文化
・指導者の育成:指導者の立場に立ちつつ学ぶ
・当たり前の規律正しい生活。ものを習う心構え、身構え
・決断のスピード。スピードがあれば判断が間違っていてもすぐに軌道修正できる。
・体力が落ちれば、気力も落ち、脳の働きも鈍る
・音読するとき脳が最も活性化する
・今の若者の最大の不幸はミッションが与えられていないこと
・漫画の世界では人気のあるものが価値がある。最も進んだ民主主義のシステムかも知れない
・生き残れる者は自分でシステムを作り、多忙さの中でも新鮮さを失わないようアイディアを出し続ける
・天才を生み出す組織を作る人間を評価すべき時代
-目次-
第1講 猿飛佐助は個性を超える
第2講 ヨハン・クライフとカルロス・ゴーン
第3講 世界的音楽家を輩出した斎藤メソッド
第4講 奨励会というスーパー教育システム
第5講 サッカー選手養成組織 清水FC
第6講 宝塚音楽学校の密封錬金術
第7講 藩校の教育力
第8講 スター誕生!
第9講 漫画家の青春溶鉱炉
第10講 週刊マンガ誌という怪物
最終講義 「なにを研究してもいい」理研を育てた太っ腹キャラ
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