読書メモ

・「夜回り先生と夜眠れない子どもたち
(水谷 修:著、サンクチュアリ出版 \1,400) : 2006.12.02

内容と感想:
 
都市部では街は24時間活動を続け、眠らない街も多い。 夜の街に誘惑され、快楽を求めて夜の世界に出入りする(夜は)「眠らない」人も増えている。 言い方を変えればそれがビジネスとして成り立っている。
 本書の「夜眠れない子どもたち」というのは、上記のような自ら進んで夜の街に繰り出して遊んでいるような 健康的(?)で元気な子供たちではない。夜回り先生こと水谷氏はもともとは「眠らない子供たち」の非行問題に 取り組んでいたそうだが、最近は状況が変わってきたらしい。そのことは先日、たまたまTVの再放送でみた番組で知ったことだ。
 眠れない原因は様々だ。番組の中で著者は各地で子供や親たちに講演をしていた。薬物の怖さ、いじめの卑怯さ、 心身ともに傷つけられ苦しむ子供たちの話など、TVの前で涙が止まらなかった。 本書にはそのTVの内容とほぼ同じことが書かれている。子供たちの苦しい叫びや、水谷氏からの時に優しく、時に厳しいメッセージが詰まっている。
 著者は所詮一人の教師ができることに限界があることを知っている。全ての子供たちを救うことなどできない。 だから、彼は自分が出来ることは子供たちの叫びを受け止め、受け入れ、そっと手を差し伸べ、寄り添うことで生きようとするきっかけを作ることくらいだと自覚している。 また子供たちを心配している人間がいることを伝えられるだけでもよいと考えている。
 最後の章で「日本の子どもたちは限界に来ている」と言っている。家庭や学校では心無い言葉が満ち溢れている、そんな大人の厳しい言葉が子供を闇に追い込んでいる、 とも言っている。子供たちみんなが皆、そういう状況にあるとは思いたくないが、現実はどうなのだろう。 家庭内の児童虐待やあきれた教師達の問題も最近よく見聞きする。まともな大人がいない社会では子供たちも安心できないし、この国の将来も不安だ。 子は親を見て育つ。”美しい国”もいいが、日本は真の大人の国家にならなければいけない。

○印象的な言葉
・夜の街に子供たちが健康的に安心して遊べる場所などない
・夜の街を訪れる子供たちは本当は温かい家庭で充実した青春を送りたいと思っている。居場所がない。
・心無い大人に傷つけられ、大人の都合で汚されている
・希望を失った子供の心の闇は深い。親に裏切られたら人を信用できなくなる
・子供を護る方法:弁護士会に人権保護の要請。児童相談所、警察も動かす
・大人は子供の背中をそっと押してやるだけ。歩き出すのは本人
・他人を思いやる余裕
・ドラッグは人を3回殺す。心、頭、身体
・ダルク:薬物依存専門の更生施設
・子供には幸せになる権利がある、大人には子供を幸せにする義務がある
・子供は失敗して当たり前

-目次-
1 夜回り先生
2 夜眠れない子どもたち
3 愛
4 先生のうそつき
5 夢吹き
6 ブランコ
7 夢
8 決着
9 なげき
10 苦悩
11 恋
12 救い
13 また、あした