読書メモ
・「齋藤孝の相手を伸ばす!教え力」
(齋藤孝:著、宝島社 \1,200) : 2006.07.22
内容と感想:
著者は教育者を育てる「教育者教育」と教育方法の専門家である。
本書では学校教育だけでなく、職場で上司が部下を育てる、家庭で親が子を教え育てる効果的な方法を説いている。
昔から識字率が高く、教育水準の高さが日本人の強みであったが、高度成長期を過ぎて、
横並びの義務教育だけでは駄目だということに日本人は気付き始めている。
従来どおりの教育手法が現在、我が国の置かれた状況ではかえって弊害をもたらしているとも言え、
様々なほころびを見せている。教育現場でも教師の腰が引け、学力低下も叫ばれている。
学ぶ側が自分は成長している、伸びているという充実感が得られるような、教え・教えられる関係が大切と著者は言う。
これまでの教師から一方的な押し付けの教育ではなく、学ぶ側が学ぶ構えをしっかり作り、彼らの関心を高め、
積極的に自ら学び、次第に教えられなくとも自分で自分を伸ばせるようにする。
「上達パターン」や勝ちパターンを身に付ける。そしていつか誰かを教える側になっていく。
場の雰囲気や相手のレベルなどに合わせて臨機応変に対応できるライブ感も必要だという。
教育もコミュニケーションだから、関わりの実感があったほうが学ぶ意識も高まるのだ。
「優れた教育とは厳しいトレーニングを飽きさせずにやらせること」と言い切る。
これが出来れば教える側、学ぶ側の双方が充実感・幸福感を味わえるだろう。
各章には教師や上司、親などからの悩み相談のQ&Aもあり、いろんな場面でヒントになるだろう。
○印象的な言葉
・教えることは学ぶことの近道
・欲望は模倣される。欲望を持った人、のめり込んでいる人によってかき立てられる
・教える側も学び続けている、飽きていない、憧れを持ち続けている、思い入れ・情熱がある
・好きじゃない仕事のほうが要領よく済ませようと研究するもの
・良い点・悪い点、出来ること・出来ないことをはっきりさせる
・叱るのではなく、事態を改善に向かわせるようなコメントを
・こうしてほしい、こうなってほしい、という願望を伝える
・指導意図の説明を
・映画は職場のコミュニケーション問題や企画立案などのテキストになる
・選択肢を示し、君ならどう考える?と問いかける
・英語学習にはペーパーバッグがいい
・復唱させれば理解できたかどうかが分かる
・教えるのがうまい人はエネルギー効率がよい
・人の話を引き出すのがうまい人はコミュニケーション能力が高い
・答えを教えてから始めるほうが効率がよい
-目次-
第1章 相手に幸福感を与える教えるということ
第2章 モチベーションをかきたてる憧れる力
第3章 相手に足りない力を見抜く評価力
第4章 優れた練習メニューのためのテキスト力(素材力)
第5章 退屈させず学習効果を上げるライブ能力
第6章 自立を促す育てる力
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