読書メモ
・「野村ノート」
(野村克也:著、小学館 \1,500) : 2006.03.25
内容と感想:
3/25、まずパ・リーグから2006年のプロ野球ペナントレースが開幕した。3/21にWBCで日本代表が優勝し、その興奮も冷めやらぬ間の開幕で
WBC優勝効果で観客導入も好調だという。近年のプロ野球低迷には好材料だ。
そのパ・リーグに昨年、新規参入した新チーム・楽天は大方の予想通り、初年度は最下位に終わった。
今年から監督を務めることになったのが著者の野村氏である。ヤクルトで3度の日本一になった名将である。
しかしその野村監督をしても阪神を優勝に導くことはできなかった。楽天での手腕が見所の一つだ。
その野村新監督も今年、71歳になる。楽天の監督を引き受けることになったとき、確か「最後のご奉公のつもりで」と言っていた覚えがある。
今年の楽天もきっと去年とは別の意味で注目されることだろう。
さて本書はその野村氏が南海で選手、あるいは兼任監督としてプレーした時代から、解説者、そして再び監督として現場復帰してから現在に至るまでに、
探究を続け自ら構築した野球理論であり、組織論である。
勝つため、チームを強くするために、どうすべきかを長年追求し続けてきた。リーダーは如何にあるべきかを説く。
目次を見れば分かるように野球チーム以外の組織にも共通する普遍的な事柄を述べている。
従って、管理者、指導者、経営者など様々な業種・分野でも応用が利くはずだ。
「はじめに」で彼の考えが集約されている。監督として5つの原則を掲げ実践してきたそうである。
@人生と仕事は常に連動している
A人生論が確立していなければ良い仕事はできない
B野球で大事なのは目、頭、感性
C技術的能力の発揮のために大事なのはコツ、ツボ、注意点
D技量だけでは勝てない。無形の力を付けよ
強いチーム・組織とはどういうものかを明快に記しているのが第7章だ。上司と部下の価値観が共有され、思考が一致することで大きくぶれることがなくなる。
上記Cのコツ、ツボ、注意点の蓄積が自信となり、優越感になり、財産となる。これが受け継がれてやがては伝統という無形の力になる、のだと。
本書では野球の技術的な理論も多く述べられているが、技術面の興味は薄くても、監督がイチローや古田をどう見ているか、とか江本、江夏、門田といった南海時代の
個性的な選手をどう導いたか、など裏話的な要素もあって野次馬的な観点でもそれなりに楽しめる。
また、第7章でリーダーについて3つのことを挙げている。
@リーダーいかんによって組織は変わる
Aリーダーは職場の気流
Bリーダーの職務は壊す・創る・守る ※信長・秀吉・家康に例えてもいる
実は監督は多くの本を書いていることをネットで知った。たいへんな勉強家であり、理論家であることが分かる。やっぱり野球が好きなんだなと思う。
○印象的な言葉
・原理原則を知れば心自ずから閑なり
・決断は賭け。迷ったら覚悟を決める。責任は自分でとる。一方、判断には基準が求められる。知識量や修羅場の経験がものをいう。
・イチローは天才である。同時にすごい努力家である。
・エースや主砲の役目はチームの鑑であること
・考えないより考えたほうがいい、知らないより知っていたほうがいい
・近年の巨人低迷の原因はフロント、監督に「未来創造能力」が欠けていること
・球団の本当のリーダーはオーナー
・人間3人の友を持て:原理原則を教えてくれる人、師と仰ぐ人、直言してくれる人
・プロと社会人野球はもっと接近すべき
・人間の最大の悪は鈍感
・成長がなければ、それは人間の根本の部分に欠点がある
・自分の思うようにならない2つのこと:一人では生きていけない、自分の思うようになることはほとんどない
・地位が人をつくる
・ファッションも気配りであり、バランス感覚である
・人格は作れるが性格はつくれない。子供の頃の家庭教育が大切
-目次-
1章 意識改革で組織は変わる
2章 管理、指導は経験がベースとなる
3章 指導官の最初の仕事は戦力分析にある
4章 才能は学から生まれる
5章 中心なき組織は機能しない
6章 組織はリーダーの力量以上には伸びない 7章 指揮官の重要な仕事は人づくりである
8章 人間学のない者に指導者の資格なし
終章
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