読書メモ

・「ポケット図解 ピーター・ドラッカーの「マネジメント論」がわかる本
(中野 明:著、秀和システム \600) : 2006.12.03

内容と感想:
 
昨年(2005年)亡くなったPeter F. Druckerは「マネジメントの父」とも呼ばれるほどにマネジメント論や 企業経営、事業戦略論に多大な貢献をし、今でもビジネス界に大きな影響を与えている。 分権化、事業戦略、民営化などは彼が考案したそうである。 単なる会社経営といった経営と組織についてだけでなく、社会と経済、政治倫理も論じる学者さんである。
 多くの著作の中でも「マネジメント 〜課題・責任・実践」(1973年)は マネジメント論を総括的に扱っており、長く広く読み続けているらしい。日本語版で上下2巻、総ページ数1,350に及ぶ。 原書を読み通すは忙しい人には難しい。本書はその「マネジメント」を読むためのナビゲーターとして書かれた。 大著を図表を使ってポイントを示し、わずか130ページほどにコンパクトにまとめている。 原書を読んだことがないから、ちゃんとポイントが押さえられているのかは分からないのだが・・。 地図も持たずに見知らぬ土地に行くと苦労するように、最初から原典を読むよりは本書のような前提となる知識が ある程度あったほうが原典を読み進め易いだろう。お買い得である。
 もっとも「エッセンシャル版マネジメント 〜基本と原則」(2001年)という原書を300ページに抄録した本も 出ているから、こちらからのほうが入りやすいかも知れない。
 さて、マネジメント論なんて経営者だけが知っていればよいから、一般サラリーマンに読む必要はないのか? 「マネジメント = 経営、管理」ではない。ドラッカーのいうマネジメントとは「組織をして成果を上げさせるための 道具、機能、機関」と定義されている。経営者のトップマネジメントのみならず現場をマネジメントする人も マネージャー(マネジメントする人)である。それぞれが「組織の成果に責任をもつ人」である。 今、マネジメントする立場でない人もいずれマネジメントする側になることであろう。マネジメント論を知っていても無駄には ならないだろう。本書は一気に読めるボリュームだと思うし、これ一冊で「マネジメント論がわかる」とまでは とてもいかないが、わかったつもりになれた。興味がふくらんだら原書にチャレンジしてみるのもよいだろう。

○ポイント
・企業の唯一の目的は「顧客を創造する」こと。利益の追求でも、利益の最大化でもない。
・企業のもつ機能はマーケティングとイノベーションの2つ
・人口動態は未来を予見する際に最も精度の高い情報を提供してくれる
・マーケティングの第一人者、フィリップ・コトラー
・日本型の意思決定に見られる根回しも、円滑な実行には効果的
・理想的な組織は会議がなくても運営できる組織
・知識社会では責任型組織が主流になる?オーケストラのように組織がフラットで、高い専門技術と責任をもつメンバーから成る。
・継続を目的にせず、変化を目的としていく
・社会的責任を前向きに、機会(チャンス)と捉える。能力には限界があり、果たせない仕事を引き受けるのは無責任。

-目次-
第1章 ドラッカーと事業戦略
第2章 利益とコストの分析
第3章 マーケティングと知識の分析
第4章 機会に焦点を合わせる
第5章 イノベーションのための7つの機会
第6章 イノベーション組織の推進
第7章 事業戦略の基本タイプと戦略計画