読書メモ
・「巨人軍論 〜組織とは、人間とは、伝統とは」
(野村 克也:著、角川oneテーマ21 \686) : 2006.012.23
内容と感想:
2006年に、著者が楽天ゴールデンイーグルスの監督就任前に書いた本。
著者は読売巨人軍(ジャイアンツ)のOBでも何でもないが、ジャイアンツの部外者だからこそ書けたとも言える。
その著者は今や伝説となった巨人のV9時代を理想とし、それを手本として選手・監督として野球に取り組んできた。
そのV9時代の巨人があったからこそ今の自分があると考えている。
しかしご存知の通り、近年の巨人の凋落ぶりはどうだろう。そのことにも1章から触れている。
野村氏の考えにはほとんど同感である。さすがに野球をよく見ている。内部の人間でも外から見ることが出来る人だと思う。
日本プロ野球の人気低迷の最大の原因は巨人にあると私は考える。そういう意味でも巨人再生、プロ野球再生のヒントが
本書にはたくさん詰まっていると思う(さすが野村再生工場!)。
著者の言葉を借りるなら、巨人凋落の要因として最も大きいのは目標や使命感、プライドを失っていることだろう。
恒例の巨額の資金を投じての補強も全くビジョンが見えない。
そういう私も子供の頃はTVに映る巨人しか知らず、巨人ファンだった時期もあった(さすがにV9時代は知らない)。
それがいつかアンチに転向(反抗期みたいなもの)、
今ではTV中継すら見ないし、スポーツニュースも試合結果を見るくらいで興味を失っている。
それでもこうやって野球の本を読んでいるというのも不思議な気がするが、腐ってもプロ野球である。
日本のプロスポーツの頂点にあるのだから是非とも再生を願いたい。
さて、第5章では組織論についても述べている。野球に限らずビジネスなどでも共通の考え方を改めて認識させられた。
かつての巨人のような絶対的な強さをもたないチームが優勝するために必要なことを書いている。
監督のもとに意思統一ができていて、作戦があり、選手も役割を認識して、きちんとした姿勢で取り組み全うすることだと言う。
それは野球を知り、プロ意識を強く持っているチームだ。また第6章ではこうも言っている。
価値観が共有され、思考が一致すればチームとして大きくぶれることがなく、
選手の自信にもなり、伝統を形成する要素にもなる、と。
○印象的な言葉
・人間学、人間教育の大切さ
・中心なき組織は機能しない
・言いにくいことも直言する
・後継者育成システム
・説得するのに最も効果的なのは数字、データ。データは分かりやすく
・知識やデータの裏付けのないひらめきや勘は単なる思い付きである
・データを利用して考える力、見えない力
・監督の仕事はチームにプラスアルファの力を植えつけること
・天性ばかりは鍛えられない。それ以外は現場で育てる
・プロフェッショナルとは見える能力プラス見えない能力を高レベルで兼ね備えている者
・親孝行、感謝の心が人間としての出発点
・原理原則をわきまえておけば、どんなときにも冷静に対処できる
・組織の中心となる人間に対してこそ厳しく
・監督は「気付かせ屋」。気付く選手は伸びる
・人間の最大の悪とは鈍感
・監督は体力以外で選手に負けることがあってはならない
・感動ほど人間を変えるものはない
-目次-
第1章 巨人はなぜ凋落したか
第2章 巨人への対抗心とID野球
第3章 巨人はパイオニアである
第4章 V9巨人にある手本
第5章 野村の組織論
第6章 伝統とは何か
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