読書メモ

・「株本
(サンプラザ中野、松本大:著、日経新聞社 \1,400) : 2006.01.03

内容と感想:
 
中野氏はインターネット雑誌でネットで株投資する記事を依頼されて株を始めたそうだ(1999年)。それも自腹で株を売買するという企画! その中野氏とマネックス・ビーンズHD社のCEO・松本大氏との対談形式で書かれた本(2003年4月)。
 ステップ2では株未経験者のS嬢に中野氏が株の口座開設から株購入までを手ほどきする。
 ステップ3は伊藤洋一氏を講師に迎え、経済ニュースの投資への活用方法を学ぶ。
 ステップ4はアナリストの太田忠氏に業績を中心とした会社研究の話を聞く。
 ステップ5ではテクニカル分析の専門家・川口一晃氏にチャートの見方を教わる。
 松本氏は元は債権トレーダーだったそうだが、単に経済だけを見ているだけではなく、日本が真の資本主義社会になることでまともな国になれる、 と考えている。日本国民それぞれが当事者意識を持ってお金の行き先を決めないと、税金は有効に活用されないし、 年金など将来の不安も続く、と憂慮している。
 一番ショッキングなのは(本書の発行当時で)日本のバランスシートは約800兆円の赤字。国民一人当たりに700万円の借金を負っているのだ。 松本氏は全額返済は無理、徳政令しかないと言う。ない袖は振れない。そうなれば将来、大幅な年金減額を覚悟しなければいけないことになる。 そういう状態にしたのは政府の責任でもあるが、そういう政策を取る政治家を投票してきた国民にも責任がある。 国民は真剣に考え、行動し、ものを言わなければいけない。他人まかせではいけない。お金の行き先を変えることでも国を変えることが出来ると、松本氏は言う。 郵便貯金は国がの保証付きで安心だが、預けたお金の使われ方が問題だ。必要なところに回っていない。 これでは国はよくならない。老後の不安も解消されない。郵貯に預金するのではなく、自らリスクを取り投資し、将来に備えるしかない。 また老後にお金がなくても安心して暮らせる体制作りが必要だとも言う。
 松本氏は面白い提言もしている。個人金融資産の大半を握る老人にお金を使わせるため、相続税を極端に高くし、生前贈与税を極端に低くする。老人から消費税を取らない。 というものだ。ただし老後の安心がなければお金を使ってくれない。ネット取引が認知されの高齢者にも株取引が拡大しそうだが、彼らの資産がみな外人投資家に 持って行かれるようだと国は困ったことになるだろう。株式市場が国際化されたためリスクも高まっている。

○印象的な言葉
・アメリカでは株は20ドルくらいから買える
・日本では行くべきところにお金や人が流れていない。お金の回りがよくなれば景気もよくなる。
・国民みんなが経済の主体・主役、当事者、参加者。直接でなくても間接的に投資しているのだ。みなリスクを負っている。
・アメリカの個人金融資産の54%が金融商品に投資されているが、日本はわずか12%。
・郵貯、年金保険料が財政投融資に流れて、特殊法人の肥大化や業務の非効率を招いている⇒政府は構造改革でお金の流れを変えようとしている
・日本のデフレは10年単位で続くだろう
・バブルの崩壊で相場師のような人たちは壊滅した
・経営体力を超えて伸びすぎている会社は必ずあとで反動がくる。無理なく伸ばせる利益は3割くらい。
・こつこつとヒットを打つことが大切
・テクニカル分析:歴史は繰り返す、という立場。株価の動き(チャート)だけで予測する。
・ギャンブルや宝くじでは最初から元金が大幅に減っている(期待値が低い)。株は(証券会社にもよるが)手数料がかかるだけで期待値は高い。
・機関投資家だけがドカンと売買するような市場は変動が大きい。個人の資金の流入が期待される。
・パチンコの年間売り上げ30兆円に対して、上場株価時価総額(2003年4月現在)250兆円だから、パチンコ資金が株に流れてくると株価は暴騰するだろう。
・日本の個人金融資産1,400兆円の半分は60歳以上の人がもっている。資産が偏り、しかも動かない資産になっている。
・アメリカは上場企業の株価時価総額はGDPの1.2倍。日本はGDPの半分。
・日本ではずっと企業の利益が株主に還元されてこなかった。ほとんどが従業員や税金へ回されていた。
・トヨタ、マイクロソフトなど国際銘柄をもっていれば国に何かあったときに資産を持ち続けられる
・マーケットには勝てない。マーケットに比べれば個人は小さいなもの。
・機関投資家は短期で運用成績を求められるため、長期の運用ができない。

-目次-
ステップ1 ようこそ株の世界へ
ステップ2 サンプラザ中野と株にチャレンジ
ステップ3 経済ニュースに強くなろう
ステップ4 会社研究に強くなろう
ステップ5 株価チャートに強くなろう
ステップ6 投資を通じて世界をみる目を広げよう
ステップ7 「賢明な投資家」への道