読書メモ
・「森鴎外 生き方の「知恵袋」 人生論ノート」
(齋藤孝:編、三笠書房 \950) : 2006.04.22
内容と感想:
本書は森鴎外が書いた「知恵袋」、「心頭語」をネタにした本。
それらには森鴎外が生きるための智恵が記されており、そのエッセンスを齋藤氏が抽出してまとめている。
いわゆる処世術を記したものだが、処世術というと出世至上主義のように世渡り上手になるための術と受け取られてしまうかも知れない。
処世術というよりはこの世で幸せに生きていくためノウハウである。齋藤氏は世の中を泳ぐ技術とも表現している。
「解説」にもあるように森鴎外という人は偉大なマルチプレイヤーである。陸軍の軍医でありながら、文筆活動を行っていた。
我が子の教育にも熱心で家族にも愛情を注いでいた。それを精神的にも安定して破綻しなかったところが凄いと齋藤氏は言う。
そのメンタリティの違いを漱石と比較もしている。仕事も家族もあり、しがらみの中でも自分のやりたいこともしっかりやる。
そういう充実した人生を送るための智恵である。こういうものは学校で学問として教わるものではない。
世の処し方を意識的に教えてもらう機会も少ないため、これから社会に出る人などにはよい羅針盤になるだろう。
○印象的な言葉
・ポストがあることが大事。環境やポストが得られれば、人はそれなりに才能を発揮する
・家族が安定すると、エネルギー効率がよい
・家族や仕事を捨てて、一からやり直す、というのは余裕がないと不可能。新築ではなく増築(リフォーム)するのがよい。
・人間の値打ちに関しては「人並み」は落第点
・文章は読む相手の気持ちになって書く。言葉選びは慎重に。
・初対面では「晴れやかな気分で」
・会話には簡潔、要約、味わい深さ、楽しげに
・若者に役に立ってやるためには押し付けでなく、求められた形でやる
・志を同じくするものを友という
・余暇の娯楽の水準を高める。文学、美術、芸術などへ
・敬意の持続が難しい
・失ってならないのは希望
-目次-
1 「自分の値打ち」を高める工夫
2 「つき合う人」を賢く選ぶ
3 人から好かれて、信頼されるために
4 「いい話し方」が味方をつくる
5 相手のことをよく考える
6 「足元」を固めて、大きな人生へ
解説 偉大な「仕事師」鴎外から学ぶものの考え方、人生の歩き方
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