読書メモ

・「iPodでLinuxしたっていいじゃない 〜手のひらの中の冒険譚
(池田 成樹:著、カットシステム \2,800) : 2006.05.21

内容と感想:
 
iPodでLinuxを動かそうというiPodLinuxプロジェクトの存在を知ったのはつい最近のこと。 一体、iPodでLinuxを動かして何が嬉しいのかとも思ったが、ガジェット好きの私には興味を惹かれた。 最近では携帯電話やDVDレコーダーなどデジタル家電の組込みOSとしてLinuxが利用されることが多くなっている。 iPodもそういうものの一つか?とも思ったが、どうも違うらしい。iPodLinuxはiPod本体のソフトウエアとは別の ブートプロセスを経て動作する(デュアルブート)。従って、iPodLinuxが動いているときに、iPodの音楽機能を使えるわけではない。
 さて、もう一度最初の疑問、iPodでLinuxを動かして何が嬉しいのか?という点だが、 iPodには大きなカラー液晶ディスプレイを持つもの(動画も見れるものも)や、大容量のHDDを持つ機種がある。 それだけでも色んな期待が持てるのだが、現在、iPodLinux上で機能するアプリケーションとしては、 音楽再生は勿論のこと、マイク録音にカレンダー、電卓、時計、ゲーム、ファイルビューアなどが提供されている。 なんか最新のケータイならこれら全部の機能を持って居そうだな(HDDをもつケータイも登場している)、とも思う。 ケータイのようなキーボード(と言えるかどうか?)もないからキー入力は出来ないし、勿論、電話も出来ないし、 インターネットにも接続できない。うーん、ますますiPodLinuxのメリットが見えてこないのだが、 そこはご愛嬌ということで、プロジェクトのチャレンジ精神自体を素直に評価したい。
 オープンなプロジェクトであり、最新の5G(第五世代)というVideo機種向けにも開発が進められている。 iPodのCPUはARMプロセッサで多くの機器に使われているもの。ただし、iPodではMMU(メモリ管理ユニット)を持たないタイプの ARM7TDMIというCPUを搭載しているため、MMUありを前提としたLinuxカーネルをそのまま動かすことができない。 しかし、そういったCPUでもLinuxを動かそうとしている人は以前からいて(uCLinuxプロジェクト)、 iPodLinuxではその恩恵に預かっている。また、GUIを提供するのがNano-X(以前はmicrowindowsと呼ばれていた)で、 これもオープンソースプロジェクト。そしてiPodLinuxが起動したときの標準の稼働環境がpodzillaと言われるもので、 Nano-Xの上で動いている、というのが大まかな構造。 ところが現在ではそのNano-XをTKKというGUIライブラリへ置き換える作業、またそれを前提としたpodzilla2の開発も進められているそうだ。
 本書では開発環境の構築やカーネルの再構築、podzillaのビルドの仕方などの説明が中心。日本語の情報が少ない現状では、貴重な情報源なのかも知れない。 さて、単純に提供されているソースをビルドしてiPodにインストールして動かして喜んでいるだけではいけない。 プログラマの心はそれだけでは満たされないだろう。自分でプログラミングしたアプリを動かすなりしないと・・。 本書ではテキストビューアを作成する例が取り上げられているが、iPodLinuxを生かすも殺すもあとはプログラミングする人のアイデア次第だろう。
 と、未だにiPodを持っていない私が単なる技術的な興味だけで手にした本である。

-目次-
第1章 iPod の歴史
第2章 手っ取り早くインストール
第3章 開発環境を整える
第4章 podzilla を作ろう
第5章 iPodLinux 探題
第6章 探検podzilla
第7章 フォントの作成とpodzilla の日本語化
第8章 podzilla、再び