読書メモ
・「生きて死ぬ智慧」
(柳澤桂子:著、堀文子:画、小学館 \1,143) : 2006.06.09
内容と感想:
表紙の帯に「心訳 般若心経」とある。我々日本人の知る般若心経全文は全て漢字で書かれ、
字面だけを見ても理解しがたい。そのため古くから色んな形で分かりやすく翻訳されてきたと思う。
”新”訳ではなく”心”訳。著者は生命科学の研究者で世界に先駆ける成果も出していたが、
難病に冒され現在も長い闘病生活の中におられる。闘病中に出会ったのが般若心経だという。
著者と仏教との出会いについては本書が出る前から新聞か何かのメディアで見知っていたが、
本書が出版されることを知り、実際に本を手にするまでは、般若心経がどのような形に訳されているか
興味があった。
般若心経自体は非常に短いお経で、本書ではわずか見開き2ページに収まっている。
本書の特徴は難解と言われる般若心経を現代語で分かりやすく訳すだけでなく、
生命科学者ならではの科学的な解釈がされている点。
宇宙、物質、粒子、などという単語が出てくる。原文には直接、そういう単語は書かれてはいない。
そして美しい挿絵。文と絵が交互に現れるから一種の絵本としても楽しめる。
読経するための読み仮名も付けられているから、そのまま読経にも使える。
更にはリービ英雄氏による英訳もされている。
結局、般若心経が言わんとしていることは「物事に執着するな」。何かに囚われることで苦しみが生じる、ということ。
しかし頭では分かっていても、なかなかその境地に至るのは難しい。
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