読書メモ
・「信長の棺」
(小林廣:著、日本経済新聞社 \1,900) : 2006.01.07
内容と感想:
小泉首相が読んだことがTV等で報道され話題にもなった本。信長好きの首相のこと、自分の政策に対して信長を意識した発言もあったりする。
つい先日も市川海老蔵主演の演劇”信長”を鑑賞したことが報道されていた。そういう私も大の信長好きの一人で、本書もかねてから読みたいと思っていた。
正月休みに絶対に読むと決めていた。大雪となった帰省先の実家の炬燵の中でじっくりと読書を楽しんだ。
本書はテーマこそ信長だが、信長その人が主人公ではない(信長が大活躍するようなストーリーを期待している方は肩透かしを食らうだろう)。
意外にも「信長公記」の作者・太田牛一である。
物語はその太田牛一による本能寺の変で非業の死を遂げた信長の遺骸(遺骨)の行方の謎解きが主題の、歴史ミステリーとなっている。
本書は著者の第一作であるが、作家となる前は企業経営の指導などを行ったりしていたという異色の経歴。
さて、信長の遺骸はどこに行ったのか?それをここで書くのは野暮なので、キーワードだけを挙げておく。
京都・阿弥陀寺、南蛮寺、トンネル、僧・清如、清玉上人と信長、丹波・山の民と秀吉、暦と天皇。
ところで2006年のNHK大河ドラマで司馬遼太郎原作の「功名が辻」が始まった。とりあえず第1話は見たのだが、桶狭間で酒宴を開き義元を足止めさせたのは、
秀吉が手配したと描かれていた。本書でも桶狭間合戦について書かれているが、真の目的が司馬とは異なる意外な見方をしていて興味深い。
ポイント:
・信長は正親町天皇に退位を迫り、誠仁親王へ譲位するよう要求していた
・近衛前久によって信長追討の綸旨は発せられたかもしれない。しかし信長を討った光秀に届くことはなかった。誰かが隠したのではないか?
秀吉が天下を取った後に前久は家康の庇護を求めている。
・変の直前に、家康が庇護者となってる商人・茶屋四郎次郎の別邸で光秀と前久は密会していたかも知れない。
変の当時、堺で観光していた家康が無事、領国に帰れたのは茶屋から情報が伝わっていたから。
・秀吉の「中国大返し」は話が上手すぎる。光秀から毛利への密書が秀吉軍に紛れ込んだ、とうのは眉唾ではないか?手紙は秀吉に宛てたものだったのではないか?
・秀吉は毛利攻めで山陽道を西に向かいながら北にも戦線を拡大している不審。山陰の生野銀山の確保が目的だった?
生野銀山は元は銅を主とする雑種鉱だったらしい。銅や銀に、金も混じっていることがあるらしい。
・桶狭間合戦の信頼できる記録はない。なぜ義元はわざわざ回り道をして目立つ桶狭間山に陣を張ったのか?
・長篠合戦の虚飾。手柄は家康のもの。信長は鉄砲隊を貸して、後ろで見ていただけ。そもそも長篠は広い場所ではない。
・一時、長崎一帯はポルトガルから借金をした大村純忠が、それを返済できなかったため実質ポルトガルのものになっていた。それを秀吉が九州攻め時に取り戻した。
・秀吉が関白になったとき、前久の猶子にするという奥の手を使った。このとき大金が動いた。
・太閤秀吉の庶民性の仮面。ただの百姓出の足軽だったのかという疑問
・信長は天皇を安土に住まわそうとしていた。安土城天守を天体観測に使おうとしていた?
-目次-
第一章 安土脱出
第二章 市中の隠・太田牛一
第三章 捨万求一
第四章 舟入学問所
第五章 隠れ里・丹波
第六章 吉祥草は睡らない
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