読書メモ
・「IT業界儲けのカラクリ」
(仁科 剛平:著、徳間書店 \1,200) : 2006.05.13
内容と感想:
著者はフリーの経済ジャーナリストで株関連の著書も多い。
本書はIT業界に的を絞り、様々な会社を取り上げて、それらが何で儲けているかを分析している。
当然、本書の情報は投資判断に役立つことだろう。また、本書と連携した専用ウェブページも公開されていて、
情報も更新されている(2006/05/25現在)。
PART1ではソフトバンクや楽天など、コングロマリット化する大手16社を詳しく解説している。
統一された紙面には業務内容や相場の展望、提携関係、レーダーチャートによる独自の総合評価や格付け、最近の業績や株価の推移などのデータも
掲載されている。
PART2ではIT業界ってどんなものを売っているのか、どういう分野があり、何がこれから伸びそうかなどを分析している。
PART3では構成はPART1と同じだが、成長が期待される企業を100社取り上げている。ヤフー、カカクコム、ACCESSなど既に有名な会社もあれば初めて目にする企業名もある。
いずれも会社名はカタカナかアルファベット。似たような業態の会社もあり、変化の激しい業界だけに差別化していかないと生き残れないだろう。
2、3年後には存在していないかも知れない。
全体の印象としてITというよりネット系と言ったほうがよい。ブロードバンドインターネットや携帯電話などを核としたサービスを提供する会社がほとんど。
広告、コンテンツ、ネット取引、ネットワークセキュリティ、などなど。セキュリティなどを除けば特に技術が優れているから成長しているわけでもないことのほうが多い。
利益を上げているのは本業ではなく実質はベンチャー投資やM&Aによる多角化などであったりすることも少なくない。ライブドアしかり。
個人的には投資するだけの魅力ある会社があまりに少ないことが感想。真の技術力がありそうな会社もほとんどない。
根拠のない期待だけが株価を吊り上げているようにしか見えないのだが。
また、6段階評価で格付けが示されているのだが、ほとんどの会社が4か5で、ドングリの背比べ状態。
投資判断にはもう少し、別の視点で評価しないと見極めは困難だろう。
ライブドアの堀江(元)社長逮捕の件でひところの株価上昇ムードも一服しているが、現在はIT業界を見る目はより厳しくなっているはずで、
第二のITバブルにはなりそこなったように見える。投資かも業界ではなく個々の企業の業績や成長性を慎重に見極めるようになるだろうし、
バブル的な株価上昇はもう期待してはいけないだろう。過度な期待は経営者側としては大きなものを背負わされる気分で辛いものだろうが、
株式公開もいいことばかりではないと感じてしまう。
○ポイント
・SBIホールディングス:ソフトバンク(SB)を冠するがSB離れが加速している
・リサーチ専業のマクロミルは日本経団連への加盟も果たし勢いあり
・クインランドは中古車買取のガリバーが原点
・ネット広告代理店のオプトは同業の中ではヤフーの取り扱いがトップ
・ゼンテック・テクノロジーはデジタル情報家電で技術をもつ
・ドリームバイザーは投資支援が得意で、個人投資家が増える近年ではキラーコンテンツをもつ強みがある
・クリークアンドリバーは2万人のクリエイターを抱えるエージェンシーが核。アーティスト専門の派遣会社といったところか。
-目次-
PART1 M&AやTOB、積極的な事業多角化でコングロマリット化する注目のネット財閥16社を徹底解剖!
PART2 気になるIT業界の人間関係とこれから伸びる分野、IT人脈相関図&分野別・業界未来予測
PART3 伸びる会社の秘密とは?その戦略と実力を完全分析。今が旬!期待の成長企業ベスト100!
|