読書メモ
・「逆説の日本史 10 戦国覇王編」
(井沢元彦:著、小学館 \1,550) : 2006.03.04
内容と感想:
シリーズ「逆説の日本史」の第10巻。
本巻でカバーする時代は以下の目次にあるようなトピックが登場する時代。16世紀後半の頃である。
一冊すべてが信長がテーマとなっている。日本史上、最も密度の濃い時代だったとも言える。
信長の素晴らしさはその構想力だろう。戦国日本を統一するという明確な構想を持ち、具体的に行動した。
しかも古きよき時代への回帰ではなく、新しい世を作ろうとした。
信長は神になろうとした、とまるで気が狂ったように言われるが、天下一統を目前にして、如何に自分の政権を権威付けするか、
権力を如何に正統なものにするかが最大の課題となっていたことを考えると、目の上のたんこぶとも言える天皇家をどうするかを
考えざるを得ない。天皇は古来から日本の権力の正統性を代表し続けていたから。
著者は安土城は神殿として作られ、信長を自己神格化することで新しい権威を構築しようとした、と考えている。
決して気が狂ったわけではなく、政治の一環であるとしている。
一方で日本統一後の中国大陸進出も念頭にあった。その構想が秀吉に引き継がれた(唐入り)のだと言う。
秀吉の考えでは大陸進出が成った暁には天皇は中国(明)に移ってもらい、明(一地方)の支配者として(封じ込め)、
秀吉自身は東アジアの覇王となる、というもの。事実上、天皇家を超越した権威を握るのだ。
信長もそこまで構想していたとすれば、自己神格化も不要だったかも知れない。
著者は本能寺の変は光秀の発作的な犯行であり、黒幕はいないとしている。(信長には)計算外の非理性的な行動だったからこそ、主殺しは成功したのだ。
○ポイント
・信長は日本史上初めて世論を見方につけることを意識した
・政権の三要素:権威(正統性)、軍事力、賞罰権(人事権)
・足利義教は信長よりも先に比叡山焼き討ちを行っていた
・歴史は一種の「総合科学」である
・商工業者の法華宗、農漁民の一向宗
・信長を凡人の尺度で測ってはいけない
・細川藤孝(幽斎)の歴史の先行きを見通す目
・信長包囲網:第一期 - 朝倉・浅井・武田・本願寺など、第二期 - 上杉・本願寺・毛利など
・安土はあくまでも大坂奪取までの仮住まいで、暫定的な首都
・京都で最も嫌われるのは「竹を割ったようなさっぱりとした人」⇒表裏がない=文化がない
・本能寺の変後、秀吉は国内平定(ライバル潰し)に9年かかっている。変がなかったら信長が2、3年で天下統一を果たしていた
・本能寺の変の年(天正10年、西暦1582年)は改暦(グレゴリオ暦へ)が行われた。信長にも以前からこの情報は伝わっていたはず。
-目次-
第1章 天下一統のグランドプランT 織田信長の変革編
第2章 天下一統のグランドプランU 信長vs宗教勢力の大血戦編
第3章 天下一統のグランドプランV 新しき権力の構築編
第4章 本能寺の変―神への道の挫折編
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