読書メモ

・「超バカの壁
(養老孟司:著、新潮新書 \680) : 2006.04.08

内容と感想:
 
バカの壁」の続編。本書は前書とは体裁が異なる。目次を見れば分かるように様々な”問題”を取り上げているが、 各章それぞれは相互には関連がない。その問題というのは考え方・見方についてである。 まえがきで書いているように前書がきっかけで著者には様々な質問・相談が寄せられたと言う。 それらに答えるような形で出したの本書らしい。それは著者が長い人生で学んだ考え方・見方を語っているだけである。 そういう考え方・見方もある、という程度で、それを絶対視しないように、と著者は言っているのである。
 新年度ということでたまたま興味を持ったのは冒頭の若者の問題。私の会社にも今年も新入社員が入ってきた。 しばらくすれば彼らは研修後、それぞれの部署に配属されて仕事を始めることだろう。「仕事というのは社会に空いた穴」という著者の比喩はとても興味深かった。 自分に合った仕事なんて本当はない、と言っているのだ。若いうちは自分に合わないなと思ったら転職したり、いろんな道を模索するのもいいだろう。 しかしいくつになってもそういうことを繰り返していくわけには行かないだろう。「目の前の穴を埋めろ」という著者の言葉は実にしっくりと来た。
 また、最後の章ではこうも書いている。はじめから自分の好みにこだわって仕事をしていたらチャンスが減る。ある程度軽く動けるくらいでないと人は使ってくれない、と。 最初から目標が定まってる人はそれに向かって邁進してもらっていい。しかし鼻からしっかりしたビジョンを持って会社に入ってくる人は稀だろう。 理想は理想として、現実を如何に理想に近づけていけるかが大事だろう。

○印象的な言葉
・大切なのは先見性より普遍性
・自分の価値が分かっているなら、他人に認められなくても良い
・身体を変な状態、極限状態に置けば人間はすぐに狂う
・仏教の無我:自分がどうだなどと無駄なことを考える暇があったら、他の事を考えろ
・衣食足りないと、まともな考え方ができない。ある程度お金は必要。
・女は無意識または身体に基づいて行動する、男は意識中心で頭でっかちになりがち
・叩き込む教育の大切さ
・いじめ問題の原因は都市化にもある
・中国、韓国、北朝鮮はいまだ昔の日本、大日本帝国を理想の姿に見ているのではないか?日本の後追いをしているに過ぎない。
・経済発展が著しい中国だが相変わらずの農民の国。北京政府は鶏のとさかであって鶏ではない
・韓国の反日運動は半島統一のための道具。北朝鮮の気を引こうとしているだけ
・後ろめたさと暮らしていく、付き合っていくのが大人
・極端に分業化すると偏った人が出来る
・人の距離が縮まるとイライラが増える。都会ではそれが強くなる。不愉快なことを他人のせいにする。
・日本語は読み中心の言語。文字が前提にならないと話にならない言語

-目次-
1 若者の問題
2 自分の問題
3 テロの問題
4 男女の問題
5 子供の問題
6 戦争責任の問題
7 靖国の問題
8 金の問題
9 心の問題
10 人間関係の問題
11 システムの問題
12 本気の問題