読書メモ

・「美人(ブス)投票入門
(山本 一郎:著、オーエス出版  \1,500) : 2006.07.16

内容と感想:
 
"美人"と書いて"ブス"と読ませる。株式投資を美人投票に喩えたのは経済学者ケインズ。 どうやら株式市場には美人に整形したブス企業(銘柄)が多いようだ。 それを皮肉って書いたのが本書。著者はネット業界やコンテンツの分野が専門の投資アドバイザという。
 どういう企業がブス企業かというと、明らかに出来ないことや、やる気のないことをやりたいこととして発表したり、決算内容に組み込んだりする会社。 それも時価総額至上主義経営の悪い面だろう。自ら株価吊り上げのために嘘の材料を出す。しかしブスの整形はいつかばれる。
 第2章ではブス銘柄の特徴を具体的に13カ条挙げて面白おかしく解説している。なるほどそんな会社や経営者がいるな、といくつも思い浮かぶところが面白い。 わが国の市場にはブスが多すぎると言う。 ではどういうのが美人候補となるか?それは成長セクターに位置している企業である。どの銘柄が上がるかというのではなく、どんなビジネスが今後重要になるか、 社会を幸せにしてくれるサービスを提供してくれる企業はどれかを見極めることが重要。
 第3章では確実に儲ける方法はないが、「損をしない」投資術があると説く。いろんな情報に踊らされて損しないようにするにはどうしたらよいかが分かる。
 第4章は山形浩生氏との対談である。「伽藍とバザール」の訳で有名だが、最近ではローレンス・レッシグの「CODE」、「コモンズ」の翻訳がある。ファンドの話からODA、エネルギーの話など 投資に関する話題で盛り上がる。

○印象的な言葉
・IPO銘柄は上場直後のお祭りから時間を経て、業績を見ながらPERが20から40になったところを狙う
・携帯向けコンテンツ企業は広く雑誌、TV、音楽といった幅広いプレーヤーと協業しながら成熟していくだろう
・ニッチ企業でも大手との提携、合併ということも狙える
・2008年の北京オリンピックのあとは深刻な世界的景気後退が訪れ輸出関連銘柄が全滅しているかも
・株屋と媒体は持ちつ持たれつ
・海外投資家といっても資金の6から7割は日本のもの
・華僑系は不動産が好き
・エンロン社は将来価値を現在の資産価値として帳簿に載せるという驚くべきことをやっていた
・日本の原発は夏のクーラー需要のためだけにある

-目次-
第1章 長期投資と美人投票
第2章 ブス銘柄13カ条
第3章 「儲ける」から「損をしない」投資へ
第4章 グダグダ経済対談―ゲスト:山形浩生先生