読書メモ
・「最強の投資家バフェット」
(牧野 洋:著、日経ビジネス文庫 \743) : 2006.10.08
内容と感想:
タイトルにあるように尊敬を込めて「最強の投資家」と呼ばれるWarren Buffett。彼の伝記とも呼べる本である。
今年6/26に300億ドル以上に相当する所有株式をBill Gatesの財団「Bill and Melinda Gates Foundation」に寄付する旨を記者会見して
世界をあっと言わせた。
それに先立つ6/15にはBill Gatesが2008年に実業界から引退し、財団の慈善事業に注力する意向を発表したばかりであった。
この一件については本書は読んでいれば何ら驚くことでもないことが分かる。
終章によればBuffettは引退後は個人資産の99%以上を慈善団体へ寄付すると公言しているそうで、
Gatesとの関係の深さについても触れられている。二人は長者番付では上位の常連である。
これまで読んだ株式投資の本でも目にしたことがあるBuffettの名だが、なぜ「最強の投資家」と呼ばれるのか知りたいと思っていた。
ネブラスカ州オマハという地方都市を本拠地としているBuffettは「オマハの賢人」とも言われている。
その理由は終章末尾に端的に言い表されている。「不確実性が高い時代に確実性が高いものを選び抜く能力」
1930年生まれだから今年76歳になる。
彼が経営する投資会社バークシャー・ハザウェイは長期保有が基本で、「永久保有銘柄」と読んでいる大量保有銘柄がいくつかある。
コカ・コーラ、アメリカン・エキスプレス、ジレットおよびP&G、ワシントン・ポスト、ABC、デイリークイーン、シーズ・キャンディーズ、
ガイコ、ゼネラル・リー、ウェルズ・ファーゴなど。
シティ・グループ、ディズニー、マクドナルドも一時期保有していたが、基本は”自分自身で内容を理解できる業種”に限っている。
銘柄選択では以下のようなことを重視する。
・十分な安全余裕率を見て、経営者も見る。強力なブランドを持ち、不況にも耐えられる、経営者は株主の方を向いているか。
・極端な集中投資、自分の好きなものに投資する
・今後十年後も二十年後も確実に存在し、強固なブランドとフランチャイズに支えられ、それぞれの産業の中で圧倒的な市場シェアを握る
また、彼はストックオプション批判の急先鋒である。株主よりも経営者を利する道具とみなしているのだ。
多くの人の彼への寸評は「(複雑な)物事をすばやく理解し、すばやく決断する」と共通する。頭のよい人物であることは間違いないようだ。
確実性を好む投資スタイルのため投資銀行業務などには興味をもっていない。
しかも米国ではエリート中のエリートであり、ウォール街を象徴する投資銀行を嫌っている。
理由は敵対的なM&Aに乗じて法外な利益を得るなど我慢ならないからだそうだ。
富豪でありながら、チェリーコークやハンバーガー、チョコが好きな、一見普通のお爺さんというギャップが余計に彼を謎めいて見せる。
金銭的な欲望とは無縁に見えながら、一方で大型買収をしたり、物言う株主として行動したりとビッグな経済活動も行っている。
きっと彼にとっては金儲けや消費そのものよりも、彼に投資してくれる株主の永久の利益や、彼が投資する会社の永遠の成長の追求を
楽しみとして生きているのだろう。それが自分の生きる道として早くから、愚直に邁進した結果、富豪とも賢者とも言われるまでになったのだと思う。
○印象的な言葉
・自己資産の99%以上を無配のバークシャー株で保有し、株主とリスクを共有
・保有株から配当はなく、換金売りしないため富豪といっても大した消費能力は持たない
・メーンストリート(大衆街)の代弁者。市場を通じて普通株を手に入れる
・株は長期的にインフレにも抵抗力を示して富を増やすなど、最も耐久力がある
・株式の分析は最も高度な知的能力が求められる
・私のような(安定)株主がいることで経営陣は事業の運営に専念でき、結果的に長期的な株主価値を最大化できる
・株式を買うのではなく、企業を買うつもりで考える
・バランスシートに載らない無形資産にも価値がある
・悪いニュースは直ちに報告せよ
・将来生み出されるキャッシュフロー(現金収入)に価値がある
・バブル期の日本のは主要企業は長らく資本を浪費し、株主の富を破壊した
・非常に良い結果をもたらす不確かなものよりも、ほどほど良い結果をもたらす確かなものを選ぶ
・マネージャー(経営者)はオーナー(株主)のように振舞え
-目次-
序章 ITバブルに踊らなかった「オマハの賢人」
第1章 生まれながらの投資家
第2章 「米国株式会社」に君臨
第3章 コカ・コーラとともに
終章 バークシャーは永遠に
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