読書メモ
・「よくわかる最新ビジネスモデル特許の基本と仕組み」
(岩崎博充&BMP戦略研究会:著、秀和システム \1,600) : 2005.10.23
内容と感想:
「ビジネスモデル特許」という言葉を最初に聞いたのは多分、Amazon.com の”ワン・クリック特許”だったと思う。
特許登録されたのは1999年だから、もう15年も前の話だ。インターネット書店として急成長した同社は当時、IT企業の代表的な存在だった。
”ワン・クリック特許”を知って、ビジネスモデル特許なるものが、それまでの(私の)特許の概念を打ち崩すような衝撃を覚えたのは確かだ。
そんな簡単な仕組みが特許になるんだ、ふーん、というのが当時の日本での反応だったと思う。そういう事件?もあって、世界中でビジネスモデル特許を取得しようという動きが活発になった。
特許取得によりそのビジネスモデルを独占でき、場合によってはロイヤルティー収入がある。また、真似たビジネスを行っている競合他社から利益を守る防衛的な意味もある。
(ビジネスモデル特許を知らないでビジネスをしていると、いつ訴えられないとも限らない)
特許というものは知っていても、ビジネスモデル特許がそれとどう違うのかを知りたくて、本書を手に取る。
ビジネスモデル特許というと、IT産業のイメージが強いが、実はITを利用したものだけがビジネスモデル特許になるわけではない。
1999年のデータだが、アメリカでは出願した業種ではITよりも金融関連が多く、4割弱を占めている。デリバティブ(金融派生商品)とか言ったものだ。
もはやITよりもFT(フィナンシャル・テクノロジー)の時代になっている。今後はバイオ・テクノロジーも有望視されている。
本書ではビジネスモデル特許の出願方法や、どういうものが特許として認められるかを知るための実例なども解説されている。
特許取得と維持にかかるコストにも注意が必要。
アメリカでは2000年からビジネスモデル特許の審査がより厳格になり、特許と認められる割合が低くなったそうである。一時期よりも慎重な姿勢に転じているようである。
本書は2001年に出た本だが、ビジネスモデル特許をめぐる状況は変化している可能性がある。最新動向をウォッチしていくことも必要だ。
ポイント:
・特許により権利者は不利益を被らないように技術を公開し、社会全体の技術レベルをアップさせることができる
・人間の作業をコンピュータに代行させるだけでは特許性は認められない
・特許のグローバル化、PCTに基づく国際出願(日本語で手続き可能)
・日本はアメリカに次ぐ特許件数を誇るが、その7割以上は改良技術で独創性が高いとは言えない、と日本企業は自己評価している
・日本には弁理士など特許実務の専門家がアメリカと比べて少ない(1999年のデータでは米2万に対して、日4,600人)
・特許のアイデア: 組み合わせ、コストダウン、業務効率化、サービス向上、逆転の発想
・改良技術でも特許は取れる
-目次-
第1章 ビジネスモデル特許とは何か
第2章 日本の「ビジネスモデル特許」事情
第3章 日米の特許事情
第4章 ビジネスモデル特許のアイデアを出すには
第5章 ビジネスモデル特許の実例
第6章 ビジネスモデル特許を取得する
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