読書メモ
・「山本周五郎のことば」
(清原康正:著、新潮新書 \680) : 2005.07.16
内容と感想:
山本周五郎の作品群の中から印象的な文句を選び、解説している。
山本周五郎といえば圧倒的に時代・歴史ものの小説家のイメージが強い。
著者は「はじめに」で、山本周五郎作品について「主人公たちが生きる姿は、時空を超越して現代人の心の奥底にしみ言入ってくる」と
書いている。これが山本周五郎作品が人気がある理由だろう。人間なんて昔から大して変わっていない。
時代小説というものを媒体にして、「現代に生きるわれわれに指針を与えてくれる」のである。
周五郎の人間凝視の眼、庶民の側に立脚した視点、温かな眼が作品から感じられるのである。
また、(人間は)”「哀しい」存在であるからこそ、「いとおしい」存在となるのである。そこに山本周五郎の限りない抱擁力が感じられる”とも書かれている。
どの作品を読んでも私も感じられる”力”がこの一言で表されている。
山本周五郎は好きな小説家の一人。泣ける。なんか泣きたい気分、人情のぬくもりを感じたいと思ったら周五郎作品に帰ってくるのだ。
印象的な言葉:
・邪気のないすがすがしさ、なにもかも条件なしにうけ容れる心のひろさ
・人間のねうち
・死ぬときには、少なくとも惜しまれる人間に
・他人を押除けず他人の席を奪わず
・人間はどこまで人をゆるすことができるか
・脇から見ると平板で徒労の積みかさねのように見えるが、(略)身も心もすりへらすようなおもいで自分とたたかい世間とたたかっている
・ながい人生の坂
・こつこつとつつましく、自分の生活をものにしてゆく人たちがいる
・転んでも転んでも起きあがってゆく
・苦しいときほど人間がもっとも人間らしくなる
-目次-
第一章 下町 - 人情のぬくもり
第ニ章 職人 - 矜持と意地
第三章 岡場所 - 苦界の女たちの涙
第四章 士道 - 武士の本分
第五章 医道・芸道・婦道 - ひとすじの道
第六章 滑稽 - ユーモアとペーソス
第七章 不思議 - 夢か現かワンダーランド
第八章 法 - 裁きとゆるし
第九章 現代 - 都市と人間
第十章 エッセイ - 読者へのエール
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