読書メモ
・「成果主義は怖くない ~「仕事人生」を幸せにするキャリア創造」
(高橋俊介:著、プレジデント社 \1,400) : 2005.09.25
内容と感想:
私の勤務する会社でも今年度から成果主義の人事制度が導入された。給与制度にもメスが入れられ、期末の成果の評価如何によっては、
来年度の給与にも影響が出てくる。従来の年功序列的な面が見直され、複雑な手当てもよりシンプルなものにされたようだ。
高度成長期のような右肩上がりの時代でなくなったことは誰もが認識していること。
変化の激しい時代、終身雇用・年功序列型では企業もやっていけなくなっている。
しかし成果主義の人事制度導入の目的が体のいい人件費コストの抑制であるならば、社員は敏感に感じ取り、
モチベーション・忠誠心が下がり、会社は求心力を失い活性化せず、みな不幸になるだろう。
では幸せになる成果主義とはどういうものなのか?そんな疑問をもって本書を手にした。
著者は慶應義塾大学教授でキャリア開発や人事制度、組織管理などが専門。
本書の題にあるように、ややもすると成果主義の弊害が強調されている感があり、不安を感じている人も多いと思われる。私もその一人。
本書では成果主義の本質を理解するために、問題点を整理している。既に成果主義を導入している、または導入を検討している企業の人事担当、経営者、
社員も一読するとよいと思う。導入済みの企業には効果の見直しに、検討中なら方向性のチェックに助けになるだろう。
著者も「はじめに」で言っているように問題のない人事制度はありえない。
制度をよりよくしていくには人事担当だけでは駄目で、社員からのフィードバックも必要だろう。
しかし、結局は個人個人がどういうキャリア構築をしていくか、という点に議論は収束していく。個人主義、自己責任である。
雇用流動化の時代であり、転職やフリーターというライフスタイルも一般的になり、ニートと呼ばれる存在も知られるようになっている。
一億総中流という時代はどこへやら。日本でも格差が表面化してきた。個人主義、自己責任もよいが、一方で弱者や失敗した人の救済も必要なのではないか?
いつも年度初めの目標設定時に悩む。期末の考課でもちゃんと評価されているのか疑問に感じてきた。でも眼の前の仕事に追われて、なあなあで来てしまっていた。
読後もやはり、目標設定や成果の評価は難しいなと、振り出しに戻ったような気分。しかし読んだのが無駄だったとは思わない。
印象的な言葉:
・変化を見極める動体視力と自らのキャリアを切り開く開拓力
・未知の原野に進む構想力
・成果主義に振り回されない幸せなキャリア作り
・変化が激しい時代、資格やスキルはすぐに陳腐化する
・社員一人ひとりが自立的に動くサッカー型組織へ
・やりたいことドライブ
・チーム重視、プロセスを評価
・貢献度に差が出る仕事、出ない仕事
・結果主義は短期志向を生む
・能力評価と成果評価は違う
・キャリアの自己基準、ビジョン
-目次-
1章 日本のホワイトカラーは生き残れるのか
2章 誰かを犠牲にする方法では会社は長続きしない
3章 あなたの会社の成果主義は大丈夫か
4章 成果の上がる成果主義、上がらない成果主義
5章 成果は出ても方向違いの成果主義
6章 あなたは成果主義で幸福になれるか
7章 成果主義に振り回されないキャリア構築
8章 成果主義でやりがいを上げる方法
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