読書メモ

・「成毛式実践マーケティング塾
(成毛眞と日経MJ:著、日本経済新聞社 \1,200) : 2005.11.12

内容と感想:
 
成毛眞といえば、かつてマイクロソフト日本法人の社長として有名であった。Windows95投入で日本でのWindows寡占状態を作り出した立役者である。 2000年に退社した後、投資・コンサルティングのインスパイア社を設立し、社長を勤めている。
 本書はマーケティング論のテキストではないが、いかに日本にマーケティングが足りないかを教えてくれる。 題に”実践”とあるように、生ものの経済を題材に、「いかに売るか」のヒントを与えてくれる。 「おわりに」で日経MJ誌編集長は成毛氏を「Mr.マーケティング」と呼んでいるほど、マイクロソフト・ジャパンの商品戦略が優れていたということだ。
 第1講では利益を生み出しているのはマーケティング部門だと言い切る。マーケティングと営業の違いを説いている。 第2講で、日本経済の失われた10年の間、日本人はものを買わなくなったという。しかし著者は買わなくなったのではなく、「おカネを使う理由を欲しがって」いたと言う。 おカネはあるのだが使うところがなかったのだ。それこそマーケティングが悪かったということなのだろう。 第3講でメディアを利用した経営者の安易なタレント化の時代は1990年台までに終わったといっている。 本書は2002年に出た本だが、最近のIT系ベンチャー企業の経営者が頻繁にメディアに登場するのを見ると、歴史は繰り返されるのだなと思ってしまう。 第5講では国内観光での観光客満足度アップのヒントを挙げている。キーワードは「(旅行)途上の白け感」。目的地だけでなく、その道中も楽しめるようでなければいけないと言う。 第6講では「実績もない赤字ベンチャーに投資し、新規公開時の利益だけを狙うという発想には、そもそも無理がある」、不健全だと言う。 成毛氏が興したインスパイア社も投資を行うが、上記のようなIPOでのキャピタル・ゲインを追求するビジネスモデルとは異なるそうだ。 投資すると同時に、オールド・エコノミー企業の企業価値を高める方法や、特許を核にした経営などをコンサルティングし、株価上昇を目指すのだ。
 そういえばうちの会社にはマーケティング部門はなかったっけ?

印象的な言葉:
・マーケティングは「個人」や「国家」のマーケティングにも応用可能
・企業の三要素「ヒト、モノ、カネ」→「IT、MT(マーケティング・テクノロジー)、FT(フィナンシャル・テクノロジー)」
・マイクロソフトにあって、アップル・コンピュータになかったものがマーケティング
・マーケティングは戦略、兵法である
・マーケティングに必要なのはアイデア、自由な発想
・織田信長は部下に自由にやらせた。部下が言うことを聞かなかったのかも知れない
・マーケティングを学ぶなら戦争論を
・日本民族は徹底的に負けた経験がない。戦争に向かない民族
・第二次大戦と同じ失敗を、企業経営でも繰り返している
・まずトヨタを落とせ
・第三者も儲けさせる仕組み
・デフレで小遣いが増えているお父さん
・GDPの半分以上は個人消費が占める
・1980年から20年間でIT産業は年率10%で成長し続けた。今後更に10年間、同じような成長は続かないだろう → 次第に分野ごとに少数の勝ち組により寡占化されていくだろう ・カジノ型資本主義は人々を疲れさせる
・日本社会の基盤は健全な中間層

-目次-
第1講 利益を生み出しているのは誰?
第2講 マーケティングは楽しい戦争だ
第3講 時間を無駄遣いさせよう
第4講 隠れ中間層を探せ
第5講 魔法とファンタジーに注目しよう
第6講 ITとカネとアタマは使いよう