読書メモ
・「恋するプログラム 〜Rubyでつくる人工無脳」
(秋山智俊:著、毎日コミュニケーションズ \2,500) : 2005.08.07
内容と感想:
スピルバーグ監督の2001年の映画「A.I.」は人工知能(ARTIFICIAL INTELLIGENCE)の略である。主人公は人間型ロボット。
見た目はまったく人間と変わらない精巧さ。人間の方がロボットに感情移入してしまう。また、主人公のロボットにも感情が芽生え、
本当の人間になりたいとさえ思うようになる。いろいろ考えされられた。
本書は人工知能ならぬ「人工無脳」を作ろうという本。実は「人工無脳」という言葉は昔からあった。その自虐的なネーミングの面白さから、
どんなものかと調べたりしたこともあった。それが人間とあたかも対話しているかのように振舞うらしいことも知ってはいた。
まさかこんな本が出るとは思ってもいなかった。面白そうなのでつい購入してしまった。
きっと将来、立派に人間とコミュニケーションできるロボットが登場することだろうと思うが、
それがもつ知能は多分、ソフトウエアで実現することになるはず。勿論、人間がプログラミングするのだ。
それをRubyというオブジェクト指向スクリプト言語(まつもとゆきひろ氏が開発)を使ってプログラミングしようという企画。
本の題にあるように本当に「恋するプログラム」が出来上がるかどうかは疑問だが、辞書をもたせることで、扱える語彙を増やし、
語彙をうまくつなげることで文章らしくなり、会話らしくなるようである。プログラムに文書を与えることで自ら学習させ、辞書を拡張していく。
あたかも感情をもっているかのようにプログラムが応答するのだ。また、インターネットに接続することで膨大な情報をネットから収集して、
辞書は更に強化される。
「人工無脳」どころか本当に人工知能になってしまうのではないか、と期待が持てるのだが、
このようなアプローチは実はもう既に家庭用ロボットなど市販を目指した製品への応用が始まっていると予想される。
既に簡単な受け答えをする癒し系ロボットがTVで紹介されていたりする。
プログラムの方が人間に恋するかどうかは分からないが(あたかも恋してくれているかのように振舞うかも知れないが)、
昨今のネット事情を見ると、人間がプログラムに恋してしまう事態も遠からず現実となりそうな予感がする。
それが幸せか不幸せか判断するのは、その人次第であるが、チャットの相手が人間かプログラムかどうかは、
ネットを介していると段々、分からなくなってくるかもしれない。それなりのニーズがあれば立派なビジネスになるとも言える。
それがいいか悪いかは別として。
いずれにせよ、Rubyプログラミングの解説書にもなっていて、ステップアップ方式で構成されているから、
プログラムが段々と賢くなっていくのが実感でき、楽しくプログラムできるのではないか。
-目次-
CHAPTER 1 はじめの2、3歩
CHAPTER 2 湯けむりRubyひとめぐりの旅
CHAPTER 3 ほんとに無能
CHAPTER 4 あこがれのGUI
CHAPTER 5 辞書を片手に
CHAPTER 6 感情コントロールの魔術師
CHAPTER 7 学習のススメ
CHAPTER 8 文章を作り出す
CHAPTER 9 ノビィ、ネットワークにつながる
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