読書メモ
・「決断力」
(羽生善治:著、角川oneテーマ21 \686) : 2005.08.21
内容と感想:
著者はかつて将棋の7大タイトルを独占した(1996年)ほどのプロ棋士。将棋を指さない人でも名前くらいは知っているだろう(ちなみに囲碁は”打つ”)。
プロ棋士は将棋で食っているから、それに生活を賭けている。傍から見れば小さな将棋盤を挟んで静かなやりとりが行われているようだが、
彼らは勝負師なのである。プロ棋士と言われる人はみなタイトル戦ともなれば和服だし、
勝負事としては見た目には激しいぶつかり合いがなく、勝負師とはほど遠く見える。
本書では著者が勝つために日頃どういうことを考え、行動しているかを語っている。
特に題名にもなっているように、その勝負の分かれ目とも言える「決断力」がどこから生まれてくるか、というのがポイント。
我々も日頃、大なり小なり何らかの決断を繰り返して生きている。
ビジネスなどで重要な判断を要するような場面(勝負どころ)で「決断力」を発揮するためのヒントが得られるだろう。
本書に書かれていることは将棋に限ったことではなく、他の分野でも通用する普遍性がある。
たとえば「一局のなかに、自分の満足するものを見つけていけば興味を持続できる」などは、
仕事のモチベーションをどう維持していくか、動機付けしていくか、ということのヒントになる。
将棋から離れたビジネスの話題にも触れていたりして、ただの将棋馬鹿ではなく、
他の分野にも興味をもって視野を広げ、それを将棋に活かしていっているのだと(失礼だが)見直した。
こういう本を書くと対戦相手に羽生さんの思考パターンを研究されるのでは?と心配したりもする。
パソコンやインターネットの普及で、コンピュータを利用した将棋研究が普及した。
誰でも棋譜を見て研究できる。プロ棋士も対戦相手を事前に研究できるのだ。プロにはやりにくい時代なのかも知れないが、
それはプロにとってはみな条件は同じであって、文句は言えない。
そんな心配はよそに丁度今も、王位戦(中日新聞主催)で王位として戦っているところである。
印象的な言葉:
・自分が苦しいときは相手も苦しい
・一回経験していれば対処しやすい。ゼロと一との差は大きい
・本当に追い詰められた経験をしなければダメ
・単純に、簡単に考えろ。KISSアプローチ
・知識を知恵に変えてこそ自分の力になる。知恵がぎりぎりの勝負どころで力を発揮する支えになる。
・不利な状況を喜べる人間
・今は既に過去である(米長邦雄)
・大局観、本質を見抜く力
・直感力の元になるのは感性
・将棋は対戦相手との共同作品。相手との駆け引きの中で自分を表現する
・積極的にリスクを負うことは未来のリスクを最小限にする
・将棋だけの世界に入っていると、そこは狂気の世界
・ぼんやりすることも大切
・器が大きければプレッシャーを感じることはない
・最先端の将棋をどれだけ勉強したかが重要。実績だけでは勝てない
・スタイル、信念、自分らしさ。周りに流されない
・確実にステップを上げていく。ペースを落としてでも続ける
・忘れれば脳のその部分に空いたスペースができ、そこから新しい発想が生まれるのではないか
-目次-
第一章 勝機は誰にもある
第二章 直感の七割は正しい
第三章 勝負に生かす「集中力」
第四章 「選ぶ」情報、「捨てる」情報
第五章 才能とは、継続できる情熱である
|