読書メモ
・「日本のSEはこれからどうなるのか」
(萩原佳明:著、翔泳社 \1,500) : 2005.11.13
内容と感想:
著者は分かりやすく言えば、ベースはIT系雑誌の編集者。Gentoo Linuxというディストリビューションのドキュメントの翻訳などを通して、
いろんな国の人と知り合い、日本のSEたちがもつ悩みを彼らに聞いてみたい、と思いついてこの本の企画になったそうだ。
副題に「大失業時代を生き抜くための考え方」とショッキングであるが、IT系の仕事(特にソフト開発)は中国やインドなどへオフショアされるようになってきて、
大失業時代というのは大袈裟かも知れないが、日本のSEはこれまでと同じようなやり方では生き残れないだろう。
であるから危機感をもって著者はいろんな人にインタビューしたくなったのであろう。そういう私も漠然とした不安のようなものがあり、
この本に興味を引かれたのだ。うちのような信州の田舎のソフト会社でも日本人以外のエンジニアが一緒に仕事をしているのが現実としてある。
インタビューに答えている人達は皆、有名な人ではないが、それぞれの分野で活躍していて、現場の声として読めば面白い。
日本以外の国の人としては、韓国、中国、モルドバ、モンゴル、インド、他の職種からは元銀行員、農家、建築士、漫画家、手品師、クラシック作曲家、弁護士と様々。
第3章はオマケっぽいが、イギリスで働く日本人プログラマ、40才中年プログラマ、大学生プログラマ。
忙しくて日々の業務に埋没していると、たまには外の世界も見ないと視野が狭くなる。
IT産業は一つの産業として認知されてきた。新興国の追い上げも急である。うかうかしていると日本人は仕事をどんどん奪われていくかも知れない。
もっと危機感をもつべきだろう。それが安易な排斥運動のような方向に向かうのは間違っている。
印象的な言葉:
・日本のよいところは、マナー、アフターサービス、マニュアル、丁寧、一所懸命。悪い所ははっきりしない所、オープンでない点
・インドは他民族国家であり、多言語国家でもある。人口約10億。公用語はヒンディー語、それ以外に17もの言語が使われている。
・値段で戦うなんてのは、テンポラリなもの。長持ちするものでない
・日本の生きる道 → バグらないソフト、匠の世界
・ハード屋はソフト屋よりもノウハウの蓄積が多い。ソフト屋は痛い目に遭った数少ない
・ソフト業界は思想、開発手法を建築業界から取り入れてきた
・難しいと言われるものほど参入障壁があるが、ライバルが少ないという利点でもある
・ベースをしっかり学んでいる安心感(次々に現れる新しい技術に追いつけない不安感)
・フレームワークを用いた開発による基礎力低下
-目次-
第1章 世界から見た日本のSE
第2章 他職種から見た日本のSE
第3章 日本のSEから見た日本のSE
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