読書メモ

・「日本史集中講義
(井沢元彦:著、祥伝社 \1,470) : 2005.12.18

内容と感想:
 
日本は古来から”大和”と書くくらいであるから、和の国である。つまり協調性を大事にする。 聖徳太子の十七条憲法では第一条と第十七条で繰り返し、「話し合いでものごとを決めるべき」だと言っている。 これが示すことは当時からそういった思想が存在したこと。急に思いついたことではないということ。 明治初めの「五箇条のご誓文」の第一条も実はこれと同じだ。江戸幕府の将軍システム、明治憲法下の天皇システムや戦後の日本国憲法下のシステムも 全て共通性があると著者は指摘する。 この思想(一種の信仰とも言える、と著者は言う)は現代まで受け継がれている。稟議書だったり、日本的な会議、根回しだったり。 これを著者は「十七条憲法のメンタリティ」、「話し合いのメンタリティ」と表現している。 これが日本を支えてきたのも確かだし、それなりにうまく機能してきたから今の日本があるのだろう。 しかしこれはリーダーシップという言葉とは対極的である。日本人はリーダーシップに欠ける、和では意思決定が遅い、と終章で著者は指摘する。 著者は外圧に弱い日本の政治システムを憂えているのだと思うが、ならばアメリカ等の高圧的な国になれ、とでも言いたいのだろうか? またメンタリティの改造が必要とだとも言っている。和でやってきた民族なのだから、国際社会の中でも和の活かし方があるのではないだろうか?

印象的な言葉:
・宗教を研究しないと、人間の行動記録である歴史の真相は分からない
・日本史全体、日本通史の専門家がいない
・韓国側は天皇家が朝鮮半島から日本に行った部族であることを知っている
・神話は歴史史料であり、民族の文化遺産
・荘園とは国家公認の脱税システム
・浄土真宗も曹洞宗も大衆化路線で教えを広めた
・家元制度は擬似天皇制
・室町時代の守護大名は足利氏を同格と見ていた。その点で室町幕府と江戸幕府は基本構造が似ている。
・治安が悪くなると物価高となる。戦国時代はインフレだった
・信長が支持されたのは、楽市楽座、関所撤廃、などで物価を下げたから
・日本人同士で戦争をしていたのが「生類憐みの令」で虫一匹殺しても厳罰を受ける国になった
・西郷隆盛は西南戦争で勝つ気はなかった
・江戸時代の武家はどこも財政破綻していた
・幕末の不平等条約は避けられた

-目次-
序章 なぜ教科書では歴史がわからないのか
1章 <古代>十七条憲法と日本人
2章 <中世>朝幕並存の謎を解く
3章 <近世>信長・秀吉・家康は日本をどう変えたのか
4章 <近代>世界の中に取り込まれた日本
5章 <現代>なぜ真実が見えなくなるのか
終章 歴史から何を学ぶか